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「ーーーい、」
「おい、起きろ。寝るならベッド行け」
ゆっくりまぶたを持ち上げれば。
目の前にいたその人に鼻の奥がツンとした。
どうしようもない、形容しがたい不安の様なものに襲われ固まってしまったわたしに、ユンギさんは気が付いて。
「怖い夢でも見た?」
それだけのわたしに。優しい声音で聞く。
「ユンギさんに彼女がいて、ユンギさんがわたしに冷たくて、ユンギさんが態と簡単に見抜ける嘘ついて、わたしにカトク教えてくれなかった」
出した声は予期していたよりずっと震えて、かすれていて。
ユンギさんは苦笑する。
「悪かったって」
あの頃のわたしが見たら、なんて言うだろう。
ユンギさんがわたしの機嫌を伺うように顔を覗き込んでる姿。
こつんと額をくっつけて、「A」と目を合わせようとしないわたしの名前を呼ぶ。
次起きたらこの人がいなくなっちゃったらどうしよう。
今までのは全部夢でした。って。
起きたばかりで、夢がわたしの首をしめて、怖い。
「いなく……なりませんか」
後々思えば寝ぼけていて謎に感情的になっていただけ。
そんなわたしにユンギさんは「うん」と小さく言って。
ソファから立たせ、よろけるわたしのお尻の下に腕を回すとほぼ垂直に持ち上げられる。
随分前に「お姫様抱っこをしろ」と要求したわたしにユンギさんがしてくれて以来。
ぎゅうって出来るから、こっちの方が好き。
ユンギさんの首に抱きつき、背中に足を絡ませ、歩き出す彼にしがみつきながら寝室へ向かう。
ゆっくりとベッドへ下ろされてからも、動こうとしないわたしにユンギさんは布団をかけて、まるで大きな子供になったみたい。
ユンギさんもいつもみたいにベッドに入って。
「しんどい想いさせてごめんな。辛かったな」
あやす様に抱きしめ背中をさすられる。
「好きになってくれて感謝してる」
「……何ですか、それ」
そんな事言われてしまったら。
どうしてこの人を好きになっちゃったんだろう。とか、好きじゃなくなりたい。とか、色々思ってたあの頃が申し訳が立たない。
またじんわりと涙がこみ上げてきた。
よしよしと頭を撫でられ、涙がばれないようにユンギさんの胸にぎゅっと頭を押し付けた。
二年前のわたし。
ちょっと頑張ったらミンユンギとこんな事出来るよ。諦めないでいてくれてありがとうわたし。大好き。
「ユンギさんが一緒にいたら悪い夢見ないと思うので大丈夫」
「ん」
「おやすみ、A」
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Agust d(プロフ) - 何度も失礼します。 年上彼氏がユンギみたいな人なら他になにも要らないなって思います(笑) これからも応援ささてください! (2019年9月21日 14時) (レス) id: fea73733b9 (このIDを非表示/違反報告)
あまいくりーむ(プロフ) - 今回のユンギさんもソクジンバナレのジンさんも主人公ちゃんを愛し、大切にしながらもツンデレで溺愛でとっても幸せなお話でした!ハッピーエンド大好きで、幸せに心温かくなりしろいさんの想像力と温かい言葉選び、本当感謝です!次回作も首を長ーくしながらまってます (2018年12月1日 21時) (レス) id: 9358b5978b (このIDを非表示/違反報告)
あまいくりーむ(プロフ) - しろいさん!素敵な素敵なお話完結お疲れ様でした!そしてありがとうございました!いつも素敵なお返事もとっても嬉しいです!今回のお話も何度も何度も繰り返し読み更新を楽しみにニマニマしながら楽しませて頂きました! (2018年12月1日 21時) (レス) id: 9358b5978b (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 名前変わりましたがせじゅんです!!私も4日はテストと面接練でしんでそうです……w我が推しの誕生日にはソクジンバナレが見たくなりますね…!さて、完結お疲れ様でした!!!ユンギさんに思い思われ幸せな約一ヶ月でした。受験勉強の間の癒やしでした!!!!!!!! (2018年12月1日 6時) (レス) id: 78df81c4e3 (このIDを非表示/違反報告)
しろい(プロフ) - あまいくりーむさん» コメントを見返していたらそう言えばあまいくりーむさんソクジンバナレからずっとよろしくして頂けてるんだな…!と嬉しくなりました。今回は沢山ありがとうございました。嬉し過ぎるコメントほんとに励みでしたほんとに…! (2018年11月30日 21時) (レス) id: 963da7c7e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろい | 作成日時:2018年10月19日 23時