今世 二度と経験したくなかった ページ27
恵と半同棲生活を始めて半年くらい経った。
『!…………』
「 A?」
「如何されましたかA様」
呼ばれた……私の名前を呼ばれた気がする。
『 ごめん、ちょっと行ってくる』
モヤモヤと心の中に濁った何かが広がっていく。
前世に1度経験した……もう二度と味わいたくないと顰めたあれとおんなじ。
何かが私の心を濁していく感覚。
『(今私が名前を呼ばれて反応できる人間は1人だけ)』
今世で私に愛を教えてくれたのは琴真似一族と琴真似 美花……そして伏黒甚爾だけ。
ビル街を飛び、その気配の元へ行けば森に囲まれた半崩壊状態の建物。
『 !…………甚爾』
体の右半分に大きく穴が空いている甚爾の死体に駆け寄る。
『……君は最後に何を想って死んだのかな』
自分の中で昂っていく呪力をそのままにしながら私は甚爾の最期に思いを馳せた。
冷たい血溜まりとまだ暖かい屍が私に躊躇うことなく現実だと突き付けてくるみたいだ。
『 ─ 術式順転″純″』
「 ………おまえ、だれ?」
私の呪力が溢れ出ていたあたりからこちらに向かっていた気配に向けて術式を発動させる。
不自然な形で空中に止まっている白髪の男と目を合わせた。
『…………ねえ、お前が甚爾をこうしたの?』
「 いや、俺が聞いてんだけど。質問で返すとかやめてくんない?」
碧眼と黒眼の視線が絡まる。
「術式反転″赫″」
『術式反転″混″』
白髪碧眼の男は背後にある森林に吹っ飛び、私もまた背後にある既に崩壊気味だった建物を貫通するように吹っ飛んだ。
『 私の質問に答えて』
″混″が効かない?……いや、似たような力で相殺されてるのかなあ。
「 俺の質問が先だった、じゃんッ!!″蒼″」
引き寄せられるような強力な力の塊を避けながら白髪男の術式を考える。
めんどくさい男だなあ……
『 私は……愛囁天女。甚爾には一時期私の先生をやって貰ってたの』
私は言ったから、次は貴方の番ね?
と視線で促せば白髪の男は、瞠目したように驚いたあと大きく舌打ちをした。
『 あらあら、疲れてるみたいねぇ……私が貴方を殺す前に早く質問に答えて欲しいのだけど?』
白髪男の服は至る所が擦り切れており、白いシャツは真っ赤に染まっている。
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武藤で無糖(プロフ) - みくさん» ヒョエーーー!そう思って頂けて嬉しい限りです。コメント凄いモチベになります!ありがとうございます߹ᯅ߹ (2022年11月8日 14時) (レス) @page28 id: 6b6a37760c (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - ヤバい...物語の進み方が好きすぎる...設定が好き....面白すぎます!夢主ちゃんのこういう感じ、めっちゃ好きです!! (2022年11月7日 20時) (レス) @page7 id: c22457a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:武藤で無糖 | 作成日時:2022年10月23日 15時