今世 ページ19
『 さっき私に殺されかけた時なにを思いだしたのかな?』
「 ……… 」
『 沈黙は答えと受け取るけど?』
「ちっ……別に愛なんて御大層なもんじゃない。死んだ俺の妻とその子供を少し思い出しただけだ」
『 家族、か……ねえ、甚爾。私に君の愛を教えて?』
「 まだそんなこと言ってんのか」
『 それが私の生きる意味だから。難しかったら甚爾の全てを話せば良いんだ。生まれた時から何を感じて、何を得て生きてきたのか。ただそれだけ 』
「 それのどこが、ただそれだけ、なんだよ…………そもそも、俺は1度負けてる身だ。勝者であるお前なら命令すればいいだろ?」
『甚爾は好きな人間に私が無理やり話しを聞き出すような女に見えるの!?』
「 知り合って1日も経ってないのに分かるか!それに距離が近いっ!!」
体を動かしながらそう文句を垂れる甚爾。
だけど離れようとはしないみたい。
_彼の人生は波乱万丈の一言だった。
呪術界御三家の術式至上主義の禪院にて呪力無しとして産まれ、極悪な環境で過ごし、家を出た時に
甚爾は気づいていないかも知れないけど、彼女の話しをする時の彼の顔は懐かしむような後悔するような、それでも愛が溢れる……そんな感じだった。
『……話してくれてありがとう甚爾。さっきはこの傷のこと笑ってごめんね』
「 いや、気にしちゃいねーさ。俺は自尊心なんてとうの昔に捨てたからな」
『 …………やっぱり好きだなー』
彼の肩に頭を寄せ、片方の腕で彼の頭を優しく撫でる。
「 惚れたか?」
ニヤリと笑う彼は私の腰に手を回し、蕩けるような甘い声色で優しく微笑んだ。
『 んふ……ふふ……あははは、あーダメだ!可愛すぎるよ甚爾!』
子供が見れば顔を赤くさせるような雰囲気を吹き飛ばすように陽気な笑い声が路地裏に響く。
「 何笑ってんだ」
『 はぁー、笑った笑った。私の事知らないの?……知らないかー、1000年前だしなあ』
ちょっと悲しい。これで宿儺のことは知ってるだなんて言われたら本格的に拗ねちゃいそう。
『 私は愛を囁く天女って言われてたんだよ?人たらし歴が違うんだなあ、それが』
「んだよ、同類ってことか 」
『 …あはは、そうゆこと!……あーあ………やっぱり好きな人間と話すのは楽しいけど、時と言う概念が憎くなるね 』
364人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
武藤で無糖(プロフ) - みくさん» ヒョエーーー!そう思って頂けて嬉しい限りです。コメント凄いモチベになります!ありがとうございます߹ᯅ߹ (2022年11月8日 14時) (レス) @page28 id: 6b6a37760c (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - ヤバい...物語の進み方が好きすぎる...設定が好き....面白すぎます!夢主ちゃんのこういう感じ、めっちゃ好きです!! (2022年11月7日 20時) (レス) @page7 id: c22457a4d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:武藤で無糖 | 作成日時:2022年10月23日 15時