03:実をいうと* ページ3
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凛の学校生活は靴箱のラブレターから始まる。
「チッ…直接言う度胸もねぇゴミ共が」
毎日最低1通は投函されている無駄に凝られたメッセージカード。
凛は中身を見るまでもなく、その洋2封筒を手に取り言葉通りゴミ箱に捨てた。
近くで女生徒が喉を鳴らして悲鳴を上げる声が聞こえた。
始めの内は文句を言ったり睨みをきかせたりもしたが、入学式から1か月が経った今それすら時間の無駄だと気づいてやめた。
一緒の電車に乗っただけ。ただすれ違っただけ。
自分からすれば意識もしていない相手から勝手に好意を持たれて、どこから監視されているか分からない状況下日々を過ごすのが、彼にとっては嫌悪の対象でしかなかった。
お前らこんな下らねぇ事を目的に学校に来てるのか、と当事者に詰め寄りたくなるくらいには頭に来ていた。
「おはよう凛くん!」
ただ一人、この女を除いては。
彼女は宇野A。同じ学年のただのモブキャラ。
Aだけは、"あの"糸師凛に対して唯一臆することなく立ち向かう事の出来る人物だった。
勿論当初は平素の如く切り捨てようとした凛だったが、意外にも自分がどれだけ辛辣な言葉を投げかけようが素知らぬ顔でAは笑った。
何度言っても諦めを見せない事も一つの要因となり、凛は抵抗を忘れた。
「…朝からうるせぇし俺の所来んじゃねえ。
しつけえと友達無くすぞ」
「友達ゼロの凛くんに言われたくな、…いただだッ」
「お前マジで調子乗んなよ」
彼は特段友達がいない事を気にしていないし、馴れ合いなど必要ないと確信しているが、いざそれを面と向かって言われると苛立ちの方が勝る。
実際周りの生徒達は、彼が(これでも割と)饒舌に喋って一生徒と小突き合いをしている今まさにこの瞬間でさえ、凛に対して畏怖の念を抱いていた。
「(あの糸師凛にあそこまで許されてる宇野さん凄え〜…)」
周りの生徒は皆同じ事を考えていた。
そして地獄のような瞬間。
いつも少し早めに来るこの教室の担任が、他クラスのAを追い出し、しぶしぶ凛の元から離れていく。
そして彼女が凛に別れを告げた途端、殺気にも近い雰囲気が彼の周りから湧き出すのだ。
「(頼むから宇野さんクラス移籍してくれ!!)」
最早A以外凛と話す事を許されていないこのクラスで、彼女もまた、違う意味で尊敬されている一人である。
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時