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19:私たちの関係 ページ19

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「凛くん」

「やっと来たかよ」

「……ゴム、返して」





ホームルーム、その日一日中無視を決め込んでいたのが、凛くんからとうとうお呼び出しを喰らった。
LINEに一言、「あと10分だけ待ってやる」。

そのまま帰る事も出来たのに、どうしても好きな人に会いたくて、期待したくて、来てしまった。





彼はその骨骨しい手首に似合わぬ水色のシュシュを通している。
私から奪って、ずっとここにつけたままにしてたんだろうか。
そんな事を考えると、また心臓が痛い。


彼だけが一人残った教室で、窓際の机に乗っかる凛くんは、少し前のめりになりながら私を誘った。





「俺が言ってやったのに遅刻したのか」

「えっ…してないよ」

「朝のうるせえの、来てねえけど」

「…言ったじゃん。ほとぼりが冷めるまで…朝の挨拶しに行くの、やめるって」

「いつまで」

「え?」

「いつになったら、また来んだよ」

「それは、」

「お前のいうほとぼりって、いつ冷めんだよ」





もう彼の目から逃げられなかった。
矢を放たれたような眼光の鋭さだった。

目を逸らしたくても神経まで凍らされたように動かない。


しばらく沈黙が空間を繋いで、漸くこの場を支配する凛くんが大きく息を吐く。同時に私もやっとの思いで息をした。


だけど次の瞬間には彼が机から腰をあげて私に壁の様に立ちはだかる。
また、息の仕方を忘れてしまう。





「……お前は、俺が一番だろうが」

「…………そ、うだけど」

「だったら、他の雑魚に触るの許されてんじゃねえよ。
 変な髪にもすんじゃねえ」

「……可愛いって、言ってほしかっただけだもん」





凛くんからの思わぬ言葉に意表を突かれながらも睨み返す。
するとそれよりも10倍は厳しい目で射抜かれてしまって、また私は何も言えなくなってしまった。


手首を冷たい手で掴まれる。
手を握ったまま、凛くんの手首にあった私のヘアゴムは返される。





「分かったから、もう髪は括んな」

「……分かったって?」

「こんなもん無くても、可愛いくらい言ってやる」

「っ……お願い、凛くん」

「あ?」





握られた手がじくじくと熱い。
俯いていると涙が出そうだ。彼が腰を折って覗き込んで来るのを首を振って阻止する。





「思わせぶりしないで…これ以上近づくと、…もう、誤魔化せなくなる」

「は? 宇野」





「ごめん、帰るね」凛くんを置いて教室を飛び出す。
外はざあざあと雨が降っていた。





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20:悲しみの境地→←18:意気地なし



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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時

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