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｢そう言えば、今日は髪を結んでいないのね？｣
ハーマイオニーは呪文学の教室から出ながらそう杏に言った。
ホグワーツでの初めての授業はグリフィンドールとレイブンクローで合同の呪文学だった。
先生は杏の4分の3程の背丈のフリットウィック教授。レイブンクローの寮監も務めている。
杏は朝食を食べ損ねたので、辛うじて食堂から取ってきた林檎を齧りながら胸の下まで伸びる髪を手に取った。
｢部屋に髪ゴムを置いてきてしまったの｣
｢パドマ言ってたわ。寝坊したんですって？｣
｢いいえ、6時に起きたわ。もう1度寝ていただけよ｣と何食わぬ顔でまた林檎に噛み付いた杏に、｢それを寝坊と言うのよ｣とハーマイオニーは小言を言い始めた。
杏は、リサと朝食を取りに行っている間に先に教室に行ったパドマがハーマイオニーの隣で何か話していた事を思い出しながら、彼女の小言を聞き流した。
ハーマイオニーと杏が呪文学で早速習った呪文の論理と定義を話している間に、階段を何回か下り終わっていた。
グリフィンドールの次の授業は魔法史だから、2人はここでお別れだ。
｢次の授業では簡単な実践をするのだそうよ。私待ち切れないわ。理論も好きだけれど、やっぱり実践が…｣
｢はいはい、その話は昼食の時にしましょう。授業に遅れてしまうわ｣
杏はハーマイオニーを魔法史の教室の方に押しやって手を振ってから、下まで続く階段を見た。
次の授業はこの階段の1番下である。
杏は林檎の芯をパッと消すと、黒いローブを揺らしながら階段をずっと下りて行った。
｢アン！遅いから心配したわ｣
｢急いで。貴方の席は取ってあるわ｣
杏は薬品の入った瓶やアルコール漬けの動物が浮かぶガラス容器が並ぶ棚を通り過ぎて、パドマが手で叩いた席に座った。
教室というより地下牢なそこは、うんと寒かった。
他の教室と同じ木製の椅子の筈なのに、ゾワリとした冷たさが背骨を這うように登って来た。
パドマは遅刻したらどうなるのかを杏に執拗く言い聞かせたが、リサが｢あと3分もあるからいいじゃない｣と、のんびり欠伸をしながら言った。
今度はそんなリサに矛先が向かったらしく、パドマが噛み付く様に彼女に小言を浴びせ、その隣に座っていた同寮のマイケルがビクビクと肩を震わせた。
パドマはキョロキョロ教室を見回してから、声を絞ってリサと杏に顔を寄せる。
｢知らないの？チョウから聞いたのよ。くれぐれも気を付けてって。いい？スネイプ教授はね…｣
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作者名：ほっぷすてっぷ | 作成日時：2025年1月19日 9時
