第207話 自分を追い詰めるな ページ8
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「皆さん、お疲れ様！」
夕方になり、空も赤くなり始めた頃、みんなはベンチに戻って各々休憩を始めた。
「なあ、明日練習試合をしないか？」
戸田が円堂に提案すると、立向居も賛同した。
「そうですよ！円堂さんのプレー、見せてください！」
「いいぜ！やろう！！」
円堂が笑って頷いた時、春奈がベンチからグラウンドに向かって叫んだ。
「A先輩！今日の練習はもう終わりですよ！」
みんながそちらに目を向けると、Aがゴールに向かってシュートを打ち込もうとしていたところだった。
「
Aのシュートはまたもゴールを外れ、ポストに当たって地面へと落ちた。
「っ、くそ……！」
Aは歯を食いしばり、近くに転がっていたボールの一つをまた蹴った。それも軌道を大きく外れ、ゴールポストに当たった。
「A先輩……」
春奈が心配そうにAを見つめた。
「もうずっと休憩してないわ。さすがに体を壊すわよ」
夏未が腕を組みAを見ながら眉を下げると、春奈も不安そうな顔をした。
「そうですよね………先輩！A先輩！」
ずっと春奈の声が聞こえていなかったらしいAは、大きな声で春奈に呼ばれて、やっと気づいた。ハッとしたように顔を上げて春奈を見ると、静かに微笑んだ。
「ごめん。今終わりにする」
「はい！ 水分補給、しっかりしてくださいね！」
「ああ」
Aはベンチの方へ歩いて戻ってくると、春奈からドリンクとタオルを受け取って、近くのベンチに座った。
「睦月」
鬼道が、タオルで汗を拭っているAの方に歩いてきた。
「あまり自分を追い詰めるな。お前のシュートは、間違いなく格段に進化している。焦らなくてもいいんだ」
Aは鬼道を見つめ、少し黙り込んだあとに、何でもないような顔で笑った。
「ああ……ありがとう、鬼道。私は大丈夫だ」
「………そうか」
鬼道は頷いた。しかし、春奈は納得がいかないような顔でAを見つめ、それから鬼道を見た。
「お兄ちゃん……」
「わかっている。だが今は本人の好きにさせよう」
鬼道の言葉に、春奈はしぶしぶ頷いた。
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作者名：無名 | 作成日時：2022年10月5日 10時
