第224話 無意識に、自分を ページ25
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「───
Aがボールを力強く蹴り、ゴールネットに向けて打ち込む。シュートは、またもゴールポストに当たった。
「………このところ、Aちゃん、ずっと調子が悪いみたいだわ」
秋がAを見つめながらみんなに言うと、みんなもAを見て眉を下げた。
「睦月先輩、どうしたんッスかね…？」
「睦月も吹雪と同じように、“点を取らなければ”というプレッシャーを感じているのかもしれない」
鬼道が言った。
「自分を追い詰める必要はないと言っても、あいつは無意識に自分を追い詰めてしまうんだろう」
──────
「……円堂は昨日からあのままか？」
「うん。食事もほとんど取ってなくて…」
次の日の朝は晴天だった。みんながいつも通り、練習のためにベンチに集まっていた。屋上では、昨日と同じように円堂が座り込んでいる。
「おはようございます！」
その時、立向居がグラウンドに駆けてきた。
「あれ？円堂さんはどこですか？一緒に、新しい技の特訓をしようって約束したんです！」
「……円堂くんは今ちょっと…」
秋の言葉に、立向居はきょとんとして、それから笑った。
「どこかに出かけているんですね！ひょっとして、一人で特訓だったりして！」
「だといいんだけど」
「え？」
「いえ！なんでもないの！」
秋が慌ててそう言った。
「とにかく、今日はごめんなさい」
「いいんです！」
立向居は笑ってそう言った。
「じゃあ、伝言をお願いします！」
「ええ」
「円堂さんが究極奥義正義の鉄拳を完成させる前に、俺がマジン・ザ・ハンドを完成させます。負けませんよ！……以上です！」
「わかったわ」
「失礼します！」
立向居は礼儀正しく頭を下げると、そのまま駆け足で去っていった。
「いつもなら、今の立向居の言葉で奮い立つんだろうが…」
みんなが、屋上の円堂を見て暗い顔をした。
Aも同じように屋上を見ていた。円堂のあんな弱った姿は、見たことがない。そう思いながら屋上から目を逸らしたAがグラウンドの方へ歩いていこうとしたとき、Aは、自分の視界がぐらつくのを感じた。
「…っ、」
「A？大丈夫？」
塔子がAの異変に気づいて声をかけた。Aは塔子を見た。
「ああ…ちょっと足がもつれただけだ」
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作者名：無名 | 作成日時：2022年10月5日 10時
