第223話 ボールを蹴る資格 ページ24
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秋の言葉に、春奈も声を上げた。
「私もです！」
「……」
鬼道は、グラウンドの方へ歩き出した。
「始めるぞ、練習」
「でも…」
「俺達がサッカーをするのは、監督のためじゃない」
鬼道は冷静にそう言った。
「円堂がいつも言っているだろう。サッカーが好きだからだ」
その言葉に、みんなはハッとして微笑んだ。
「サッカーを守るために、エイリア学園に勝たないとな」
「お兄ちゃん…！」
「行くか！」
みんながグラウンドへ向かっていく中、一人だけまだ立ちすくんでいる円堂に、秋はボールを渡した。
「円堂くん！」
「…………練習、できない」
円堂は、ボールを押し返してそう一言つぶやいた。みんなが振り返った。
「……どういうこと？」
「今の俺は、サッカーと真正面から向き合えない。……ボールを蹴る、資格がないんだ。だから…それまでボールは預かっておいてくれ」
円堂はそう言うと、一人、去っていってしまった。
「アイツ…」
「円堂君……」
こんなことは初めてだった。よりによって、あの円堂が、ここまできて、大きな試練に阻まれたのだ。
─────
円堂が屋上で一人座り込んでいる中、みんなはそれでも練習を始めた。
グラウンドを、みんなは掛け声に合わせて走り込んだ。
「声出してけよー！」
「ファイト！ファイト！」
しかし、やがて曇り空になり、雨が降りだした。
「これじゃ練習できないな……」
「そうね……今日は中止にしましょう」
みんなが建物の中に入って窓の外を眺め始める。
そんな中、Aはボールを拾い上げ、建物の外へと出た。
「あれ……Aちゃんは？」
秋があたりを見回し、Aがいないことに気づいた。みんなもあたりを見まわすが、Aの姿はない。
「あ、あそこ…」
春奈がグラウンドを指差した。雨が降りだしたグラウンドの真ん中で、Aはボールを手に、ゴールを見つめていた。
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作者名：無名 | 作成日時：2022年10月5日 10時
