第220話 二人の人格 ページ21
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「あのときの先輩の顔…」
「確かに、見たことないような顔してたな…」
塔子が頷いた。
「それに、イプシロンと戦ったときも。ボールを持ったら感じが変わるのは何度かありましたけど、あのときは、妙に気持ちが昂っていたような…」
春奈の言葉で、円堂は何かを思い出したようにハッとした。
「どうしたの？円堂くん」
「実は俺…イプシロン戦のあと、吹雪に聞かれたんだ。『僕、変じゃなかった？』って……でも俺、なんかうまく答えられなくて…」
円堂は重苦しい顔で俯いた。
「もしかしたら、吹雪のやつ、相当悩んでたのかな……」
「監督は何か知ってるんじゃないですか？」
鬼道の言葉に、瞳子監督は顔を上げ、みんなから目を逸らした。
「何か知ってるんですか？……監督！」
瞳子監督は決心したように前を向き、みんなを見回して語り始めた。
「吹雪くんには、弟がいたの」
「“いた”？」
瞳子監督は頷いた。
「アツヤくんといって、ジュニアチームで吹雪くんと一緒にサッカーをやっていた」
監督の言葉を、みんなは真剣に聞いた。
「兄がボールを奪って、弟がシュートを決める。完璧なDFFWコンビだった。でも……ある日、事故が起きたの」
「事故？」
「サッカーの試合が終わって、車で家に帰る途中……雪崩に」
みんなの顔は衝撃で歪んだ。
「運良く車から放り出された吹雪くんは助かったけど、アツヤくんとご両親は……」
「そんなことが……」
「そして、それ以来吹雪くんの中に、アツヤくんの人格が生まれたの」
監督が言った。
「アツヤの人格？」
「吹雪くんの中に、二人の人格が存在するのよ」
「それじゃあもしかして、エターナルブリザードは…」
「アツヤくんの必殺技よ」
みんなは目を見開いた。明かされる吹雪の過去に、みんなは驚きを隠せない。
Aは、目の前のベッドで眠っている吹雪を見た。あの試合中に見せた焦燥しきった顔は、イプシロン戦でのことや、染岡の離脱だけが原因ではなかったのだ……。
「つまり、エターナルブリザードを打つときの吹雪は、アツヤになってたってことか？」
「でも、本当にそんなことできるんッスか？二つの人格を使い分けるなんて」
「難しいでしょうね」
瞳子監督は静かに言った。
「だから、吹雪くんはエイリア学園との過酷な戦いで、その微妙な心のバランスが崩れてしまったのかもしれない」
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作者名：無名 | 作成日時：2022年10月5日 10時
