【H×H】神々の花嫁と蜘蛛の糸

糸、21本 ページ25

２回目の夜が来た。
もう少しでこの空間から解放される。


「ねぇ、Aさん。」
「……何でしょうゴンさん。」

被っていた毛布からそっと顔を覗かせるゴンさんは聞きたいことがあるんだけどと続けた。
別に拒む理由は無いので答えられる範囲ならと言い、彼に向き直った。

「Aさんって、故郷が無くなって悲しい？｣


ゴンさんは、昨日の話を聞いていた。
別に聞かれても困る話でもないけれど、少し驚いた。

「悲しくはありませんよ。国が無くなっても信仰するものは無くなっておりませんので……。」


＿＿＿＿「じゃあ、Aさんの家族は何してる人なの？」


家族……？
そういえば、物心ついた時にはもう教会に居たんだっけ。
母親と父親の顔を一度も見た事がない為、返答に困った。私はどんな両親の元に生まれたのだろうか。


「Aさん？」
「ああ、すみません。家族は…いるんでしょうけど顔を見たことがありません。」

理由は聞かないでくださいと付け加えると、小さな声でごめんなさいと謝られた。



＿＿＿＿家族、か。

カルスブルクが無くなって、国民も全て居ないのならば会えることは無いけれど。
…けれど、父親と母親に会ってみたいとその時確かに思ったのだ。

父親はどんな人なのか、母親はどんな人なのか。頭の隅であれやこれやと想像しているうちに、私は眠りに落ちた。


そして既に時は50時間を過ぎていた。
扉はとうに開けられていて、私たちは足取りを早めさらに先へと続いて行った。

「…これで、最後。」

もはや誰が呟いたかも分からない位に疲弊していて、最後という言葉に期待を膨らませて扉を開いた。

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