ただ君に幸あれ。 (ページ4)

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「でも良かったな山田。お前が討伐に失敗したA207が今日未明に処理された」

正座する山田の頭をわしゃわしゃと掻き回す薮。先程まで静観を貫いていたが最年少の一人があまりにもいじけているので見ていられなくなったようだ。

「…早すぎない？」

山田が抱いたのは違和感であった。山田が討伐に失敗したと伝えたのはつい数分前。なのにもう討伐隊が組まれて処理されたと言うのはあまりに現実味を帯びていない。しかもA207は増殖する厄介なエイリアン。直ぐに片付くわけがない。

「朝早くに通報があってね。俺が確認したから間違いないよ。A207は処理が完了してた。見た感じ、エイリアン同士の戦闘で負けたっぽかったな。」

ゆるゆると回答した伊野尾。相変わらず眠そうな顔つきで語る。

「と言うことでお前の討伐失敗は不問になったわけだな。ただし、失敗したならさっさと連絡を寄越せ。今回はことなきを得たけど、毎回こううまくいくわけじゃない」
「ごめん。薮ちゃん」
「いいさ。次回から気を付けてくれれば。さ、仕事すんぞ」

山田の様子を見てこの件に関することを終わらせた薮。ぽんぽんと山田の背中を叩き励ましていた。
しかし、山田の顔色は晴れず未だ何かを疑問に思っているように見えた。

「どうした？」
「薮ちゃん達はさ銀髪のエイリアンについて何も思わないの？」

もっともである。山田の話の中に出てきた番付のない想定外のエイリアン。それについて誰も言及しないのだ。しっかりと銀髪が強いことは伝えたはずだ。普段ならすぐにでも番付が行われ討伐の目処を立てるはずなのに誰もそのように動かない。それがどうしても異様で、理解できない。それが山田の思いであった。

「あー、そっか。山田って知らないのか。変な銀髪の話。お前が見たのは変な銀髪って呼ばれてるエイリアンだよ。いつからいるのかも、どこの星から来たのかも、目的も不明。ただ、対策課が処理し損ねた高順位のエイリアンを片付けるバケモン。対策課も何度も部隊を派遣して討伐を試みたけど全て返り討ちにあったらしい」
「変な銀髪は人を襲わないみたいだし、エイリアンの処理を勝手にしてくれるから利用できるうちは利用することに上でなったみたいでね。今じゃ、遭遇した隊員は出世する〜、だなんてことも言われてるよ。良かったな、山田」

薮と有岡の説明をぽかんとした表情で見つめる山田。納得いきません、と顔に書いてあった。