明日も君と、恋をしよう【after】

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忘れかけてたお茶漬けが
３ついっぺんにやってきて

さすがにキツキツのテーブル




「てか俺、知らねぇんだけどさ、」




唐揚げを片付けにかかる岸くんは
下のレタスにも手をつけて




「海人って何の専門行ってんの？」

「俺ぇ？」




ころり出てきた最後の1個は
ちゃっかり海人に摘まみ取られる




「んとね、マッサージとか整体とか」

「へぇぇ、そういうのやってんだ」

「そう。あとは鍼とかの勉強もやってる」




ね、なんて飛ばされた眼に
まぁ頷きはするけど

俺もこないだ知ったばっかだしな




「ほんとはダンス系の仕事したいんだけどね、それで食べてける保証ないし」

「え、ダンスやってんの？」

「うん。まぁまだスクールも続けてるし」

「かっけぇなぁ、」




レンゲに掬ったお茶漬けに
尖る唇で吸い付いてから




「けっこう通うんだよ、ダンスしてる人」

「あー、身体使うもんな」

「そおそお。だから元々興味はあったの」




ヘラリ枝豆を取った海人は
瞳に霞みなんてなくて




「わりと面白いよ、人体実験みたい」

「人体実験、」




わかりやすく引きつる岸くん


そりゃあ海人はそんなの見ちゃったら
にんまり唇をあげるわけで



「岸くん、右手貸して？」

「え、なんかこわいんだけど」

「いいからいいから、ね？」



結局とられたその掌を
海人の指がなぞってって



「んーとね、……ここかな」

「いって！ちょ、ギブギブギブギブ！」



引き抜いた右手を振る岸くんから
いってぇ、なんて嘆き声



「えぇ？そんなに？ヤバイよ岸くん」

「や、マジいてぇって！」

「そんなに力入れてないけどなぁ」



しかめて戻りそうにない眉毛に
こっちはまた吹きそうになるのに

マジかよ、なんてその手を仰ぐから
つられて自分の右手をさする



「ほら、面白いでしょ？」

「言い方がこわいわ」



んふふ、なんておどけてから
遮る瞼で変わる瞳は

いたずらっけを消してて



「でもやっぱ面白いよ。身体って繋がってんだなぁ、って」



海人に撫でられたグラスが
ぽたりひとつ汗を落とす




「ダンスは趣味で続けられなくもないしね」




指先で顎を撫で上げながら

へぇ、なんて零したまま
岸くんはパチリ瞬いて





「なに？」

「いや、ちゃんと考えてんだなぁって」

「俺だって大人なんですぅ」





夢だけ見てるわけじゃないけど
諦めてるわけでもなくて





「大人だよ、海人は」

「え、なに急に」






俺なんかより、ずっと大人だ

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