明日も君と、恋をしよう【after】

18 ページ18

.





ちょっと待ってね、って座らされて
離れちゃう背中を見てれば

ちょこまか行ったり来たりして






「これ、よかったら」

「わ、ありがとう」






ふたつやって来たホットミルクが
ローテーブルに載っかるけど

向かい合わせなもんだから






「ね、」

「ん？」

「こっちがいいな」






カップを横並びにすれば

え、なんてちょっと固まる肩は
そわり右に座り込む




そうさせたのは自分なのに
隣からAちゃんが香るから

力む背中がちょっと伸びて





「いただきます」

「うん、どうぞ」






手のひらで包んだ熱は
焦がさずじわり拡がるから





「ん、おいし」





あっつくない、なんてこぼして
またカップへと口付ければ





「紫耀くん猫舌だもんね」





声に飛ばす視線の先で

イタズラっぽく細まる瞳に
不意を突かれて詰まる声






いつそんな話したっけ、とか
ちょっぴり頭を巡るけど

それさえ覆って滲むのは
じわり拡がってく心地良さで





「なんか、いいね」





ん？、って向けられる瞳は
素直にハテナを浮かべてるから

くすぐったさに取る左手の甲を
乗せる手の平で包んでみる







「そういうの覚えててもらえるの。なんかいいな、って」








猫舌だとか

クセだとか







ほんのちょっとの輪郭を

いつのまにか知ってくれてて
それをちゃんと覚えててくれて









そうやって

Aちゃんの中に









ちょっとずつ




俺が




増えてって









「これ、ぬるめにしてくれたん？」

「アツアツじゃないほうがいいかなぁって」








こういうのって

こんなに嬉しかったっけ








「うん。こんくらいのが飲みやすい」

「ふふ、それはよかった」






乗せてた手で握りながら
ありがとって覗き込んだら

緩んだその眼は照れちゃって
頷いただけで落っこちる








「Aちゃんの手、あったかいね」

「え？あぁ、お風呂入ったからかも」








手に入れたままの温もりに





もっと

知ってもらいたくて







「あのさ、」






話したいことばっかりが
どうしようもなく膨らんで






「うん？」






どうにも止まんなそうだから







「今日ね、フルでバイト入ってさ」







ここはもう、潔く張り切って

さぁなにから喋ろうか、って
そっちを考えることにした

19→←17

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す