明日も君と、恋をしよう【after】

1 ページ1

.





紫耀ってさ、なんて声は
ビールにごくり区切られて





「意外と慎重派なのな」





くっきり俺を映す岸くん





「うん、俺も思った」

「奥手過ぎてびっくりなんだけど」

「うん、俺もびっくり」





なんだよそれ、って呆れた口へと
コロリつくねが引き落とされる






「なんでもガツガツ行きそうな感じなのに」

「あー……、なんか前も言われた気がする」





ガタイが良過ぎるせいなのか
なんでなんかは知らんけど

大人しくは見えないらしく





「デート、次で何回目？」

「えっとね、3回目」

「マジ？3回目？」

「マジですけど、なにか？」





いやぁ、ってもたれた背中から





「もっとしてると思ってたわ」





思ったとおりのひと言





「でも電話とかはしてるよ？」

「どんくらい？」

「えー、どんくらい？」






昨日もちょこっと話して、

こないだ結構な長電話したのは
たしか金曜くらいだっけ





「3日に1回くらい？」

「おー、そこは結構いってんだ」





まあね、って引き千切ったねぎまは
冷まし過ぎちゃったみたいで

もったいないことしちゃったな





「時間はまちまちやけどね」

「え、どんな話すんの？」

「んー……。色々？」





自分が惚気切ったからなんか
話を変える気はないらしく




「その色々が知りたいのよ」




にいって上がった唇は
誤魔化させてくれそうにない




「色々は色々なんやけど」

「なに、2人だけのヒミツ的な？」

「や、そんなんじゃないけど！」





知りたい、って言われたってさ


今日は月がよく見えたとか
寝坊する夢をみただとか





その日次第でまちまちやし






「じゃあAに聞いちゃおっかな」

「ダメダメダメ。それはなんか無理」





っていうか、






「それさ、やっぱイヤなんやけど」

「呼び捨て？」

「分かってんならやめなよ」

「だから今更ムリだって」





情けないヤツやなぁ、なんて
自分が1番分かってるけど

回るお酒に任せてれば





「ちゃん付け」

「ムリだなぁ」

「さん付け」

「もっとムリ」

「あ、苗字！」

「っあー、だからおまえさぁ？」





その口元から抜かれた串が
ビュンって空気を切りかけて


ついドキリ仰け反りかける





「いい加減、A、って呼べばいいじゃん」

2→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す