まくらのはなし【プチ短編集】 (ページ3)

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ひざまくら×ソファページ3

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どかりソファに降りてきて
横倒しになる紫耀くんに

思いっきり開く雑誌で
なんとか防いで切る視線

『え、なんで？』

「なにが？」

『雑誌。シャットアウトじゃん』

ひざまくらは、まあ良しとして

下から顔見られるなんて
そんなのは勘弁してほしいし

バレンタイン明けの今なら
何より顎が危険すぎる

だから、文句は全部スルーで

『聞いてる？』

返事代わりにと捲った
春への着回し特集に

早いなぁなんて他人事

「ひゃっ、」

『あ、コレ効くんだ』

摘まれたお腹に屈んで
雑誌の開きが狭まっちゃえば

あっさり覗き上げられては
にやり引く目尻が憎い

『俺、悪くないよ？』

「なんで」

『イジワルしたのそっちだもん』

手のひらをこっちへと向けて
指先をもぞつかせながら

擽ぐるよアピールするから

仕方なしに降参すれば
柔いにんまりなのがずるくって

「首痛くならないの？」

『ならないねぇ。……気持ちい』

ご満悦なのはいいけれど
喜んでいいか微妙だし

……やっぱ痩せたいな

『これ、ひざまくらだよね？』

「そうだけど」

『でもここさ、ひざじゃないよね』

話しながら伸びる指は
ブランケットの裾を取ると

三つ編みもどきを結い出して

『ふとももまくら？』

「あー、なるほど」

たしかに

そっちのが正しい

「でもちょっと語呂悪いね」

『2文字vs4文字だもんね』

「ももまくらとか？」

はっ！ってはっきり飲む息に
眼から口までまんまるで

それだ、なんて止まった手と

『なんか美味しそう』

へにゃり頬っぺに引く線が
紫耀くんをワンコへと似せる

『マジの膝だとちょー痛そう』

「普通に骨あたっちゃうよね」

『だってさ、こうゆうことっしょ？』

ずりずり下がってく頭が
ほんとの膝に乗っけられて

ソファを落っこちるギリギリ

「やっぱふともものがいいね」

『や、これ意外といいかも』

「えぇ？ほんとに？」

『マジマジ。首のコリに効く気がする』

押し付けられまくった膝は
動かれ過ぎるとくすぐったくて

喉に声を閉じ込めるのに

ん？、なんて上がるその眉は

どうやらめざとく気づいたらしく
にやり目元を引き下げる

『はいっ、戻ったげる』

褒めてほしそうな口振りに
つい息が緩むもんだから

「よくできました」

触れて分ける髪を

撫でてみた