ふたつのいと 5

5-18 左手と、右手 ページ18

5-18 左手と、右手






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不服そうな隆二さんとタクシーに乗り込む。






『まだ何か怒ってますか？』








「怒ってねーよ。」






『怒ってるやん』





「怒ってねーって」





『隆二さんって可愛いんですね』






「茶化すなよー。」






そう言う隆二さんの左手は、私の右手に。






「なんか文句ある？」






『ないですよ〜』









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先にレインに到着。









「終わった頃に来るから。」







『いいですよ、先に帰っててください』







「…どっちに？俺んち？Aんち？」







『ん〜、じゃあ隆二さんの家で！』





「分かった、じゃ、後で」








自動で閉まるドア。




進むタクシーを見送って、セキュリティーコードを打ち込む。









いつもと同じ行動なのに、心は弾んでる。









『さっ、仕事、仕事！』




パチンパチンと二度、頬を叩いて開店準備を。









クローズのタペストリーをかけたドアノブ。






そこから、カランコロンと音がする。






「あのぉ…」








『岩ちゃんさん。どうも』








「今日は…そのっ」






『今日は黒のワイシャツなんで大丈夫ですよ』





「いやっ、そうじゃなくて。」






『どうぞ、座ってください』






カウンターに座るがんちゃんさん。





『営業前なんで、簡単なものしか出来ませんが、何か飲みます？それとも、お腹、空いてません？』







「なんでわかんの？」





『長い間ここで働いてると、分かるんです。お腹すいてるなぁとか。疲れてるんだろうなぁとか。ある種、人間観察をしてるような職業なので』






「へぇ。すごいなぁ」







『岩ちゃんさん、嫌いなものってありますか？』





「ううん、ないよ」





『じゃあ、オムライス。食べます？』

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