#百八十五振り目 ページ42
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「...お、り...ら...」
意識の欠片が、有象無象に飛び回っている。
ここは何処で、何時で、
...俺は、何だ。
時代を渡り過ぎて、己を見失いでもしたのか。
「...ら!...く...り..!」
身体は一貫して動かないまま。
どこからともなく聞こえてくる微かな声に、耳を傾ける。
名を、呼ばれている気がする。
俺の名前。
___俺の、
今まで、この名のおかげで掴めた出会いがあったではないか。
俺の、名は。
「大倶利伽羅!!」
「...っ...?」
殊更にはっきり聞こえた声。
驚きと困惑で、大倶利伽羅は重い瞼をこじ開けた。
どこともいえない、不思議な空間。
が、己が本丸の縁側に腰かけているのだけは、何となく分かった。
どうやら、うたた寝をしていたらしい。
「ちょっとあなた大丈夫?珍しいわよねあなたがぼんやりしてるなんて。でもまぁ、仕方ないかしらね。大太刀にあれだけの打撃食らわされて、折れない刀剣って中々いないと思うわー」
相変わらず、打刀のくせに妙に頑丈なんだから!
...そう言って己の隣で笑う女性。
ふとそちらに目を向けると、
「...!!」
それは確かに、見覚えのある笑顔だった。
春の日差しのような、柔らかいそれ。
見覚えどころか、___忘れようにも忘れられないもの。
「...あ、るじ...?」
「せぇかぁいー!大倶利伽羅君の主の明留さんです!どうだ?驚いたか!...なんてね」
「何であんたが...、こんな、ところに」
てへっ、と舌を出す女性、...明留。
十年前、己の腕の中で忽然と姿を消した彼女が今、目の前で、笑っている。
いやそもそも。
"大太刀から打撃を受けた"?どういうことだ。
それならばなぜ俺は。
...ここで、主と会話している?
「いやー、見事な混乱ぶりね。けどいいの、私の事は気にしないで。ちょっとだけ、あなたの意識の中に入り込んでいるだけだから」
「は...?」
「娘が頑張ってるところ見てたら、居ても立っても居られなくなちゃって」
「Aは...。まだ、生きているのか?」
影華に捕らわれたAの姿。
もう、希望の灯火は消えかけていた。
明留の口から出る答えが、もしも己が望んでいないものだったら。
「何言ってんのよ、私の娘がちょっとやそっとで死ぬはずないじゃない!ぴんぴんしてるわ。ちなみに私もね」
「......」
「娘の霊剣の付喪神として今ここにいることが出来る。だから、よく聞くのよ大倶利伽羅」
安堵に溜め息を溢す。
明留の表情が、すっと引き締まった。
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*紫苑*(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます!続編完成しましたよ!(*^▽^*)続編の方でも楽しんでくださると嬉しいです…!(*≧∀≦*)あともう少しだけお付き合いください!よろしくお願いします! (2020年4月3日 21時) (レス) id: a951637298 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編気になるーーー頑張ってください!!!!大ファンです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 54588389f1 (このIDを非表示/違反報告)
*紫苑*(プロフ) - ちゃらんぽらんさん» 嬉しいコメントありがとうございます...!!1人でも多くの刀剣乱舞ファンの方を伊達組沼に落とそうと画策していた次第であります(笑)楽しんで頂いているようで作者も本望です(*^▽^*)続編、ラストスパートかけていきます!あと少し、よろしくお願いします!! (2020年3月23日 11時) (レス) id: a951637298 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃらんぽらん(プロフ) - (続)寂しさも感じます、続きを楽しみに待っております!かなり長くなってしまって申し訳ない!更新頑張ってください!!! (2020年3月20日 13時) (レス) id: 72997b1d17 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃらんぽらん(プロフ) - 初コメ失礼します!!めっっっっっっちゃ続きが気になりすぎて夜しか眠れません((元々鶴丸だけを推してたんですが、この小説がきっかけで一気に伊達沼に堕ちました……サイコーだぜ…((続きが気になるし、早く読みたいと思う反面、伍で終わってしまうのか…という(続) (2020年3月20日 13時) (レス) id: 72997b1d17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*紫苑* | 作者ホームページ:http://twitter.com/wakagi116
作成日時:2019年5月10日 18時