第22話 ページ24
副校長の机に飛び乗ったむーちゃんの身体が突如光り、形を変えていく。
まるでなにか進化するような、そんな動きだった。
「…そんなに帰りたいの?折角入れてあげたのに。変な人間」
「…むーちゃん…?」
「あれは仮の姿、こっちが本体ね。ああすれば、あたしがラスボスだって気付かれずに貴女たちを監視できるじゃない」
透き通るような声、妖精のような姿。私たちより少し小さいほどの身長になったそれは、机から足を投げ出して座るよう姿勢を整えた。そこに、先程までの面影はなかった。
「私たちをここに入れたのは…ケータイを出現させたのは、貴女なの?」
私はむーちゃん、いや、別のものになってしまったラスボスを見つめながら、そう言った。
「違うわ。ん、違くないかも。あたしなんだけど、あたしじゃないよ」
「どういうこと?」
「何でもいいじゃない、そんなこと。ねえ、戦わないの?勝てたら帰してあげるのに!」
私は暗い笑みを浮かべるラスボスを下から見ていた。
忘れられているかもしれないが、私と亜美は先程まで、精神と身体の疲れで立てなかったのだ。
亜美はもう立ち上がったが、私はまだ本調子じゃない。
とりあえず、ゲーム特有の四次元カバンから途中で拾った大鎌を出して右手に握る。
「あれ?もしかしてまだ疲れてる?」
…敵にそんなことを気づかれてしまうとは。まあ、当然か。
「ふふ、向こうでは貴方たちの神隠し現象は気づかれないから、別に急がなくていいの。由美ちゃんにはなんかずいぶんと可愛がってもらったし?待つくらいはしてあげる。あたしのことは、フィラって呼んでよ」
ラスボスともなると、名前が付いてくるのか。そんなどうでもいいことを私が考えていると、亜美が口をはさんでくる。
「気付かれないってどういうこと?」
「あぁ、というより"居ないことになってる"のかな?記憶操作ね。仮に戻っても、その間の世界の記憶が操作されるから、いつまで居ても大丈夫だよ」
「…ずいぶんと大掛かりね。なんでそんなに親切なの?何が目的なの、一体」
「それは秘密!あたしがやることは、貴方たちをここに入れること。それだけだよ」
フィラは机に立ち上がり、くるりと可愛らしく回る。
周囲に矢のようなものが浮かんできた。
「喋りすぎちゃった。そろそろ待ちくたびれたし、始めちゃっていいかな?」
私は立ち上がると、鎌を両手に持ち直した。
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作者名:埣空 碧(さいくう あお) | 作成日時:2013年4月20日 19時