389話 ケーキが溶けた! ページ40
ケーキを夢中で食べていると、安室さんが俺を見て、にこっと微笑んだ。
なんだ?と思ったときには、手が伸びてきて口の端を指で撫でられた。
自然なその動作に、一瞬何か分からなかったが、安室さんが自身の指先についた白いクリームを舐めて、ようやく理解した。
『っ…!』
そういうことは外では…っ!と言いたくなるのをぐっと耐える。
唯一一部始終を見ていたコナンだけは、呆れたような冷めた目でこちらを見ていたが。
「生地だけとか、クリームとフルーツだけとか、食べ方も変えられて、凄く楽しいケーキです」
蘭の言葉に、安室さんは笑顔を向けた。
「そう言っていただけると、うっれし♪」
……なんだ、今の言い方。
あざといにも程がある…!
赤くなる顔を伏せて震えていると、隣から痛いくらいに冷めた視線が突き刺さってくる。
冷めた目でこっちを見てるんじゃない、名探偵…!
「あ!そうだった!ここに来た用事を忘れてた」
急に立ち上がった毛利さんが梓さんに何かを手渡す。
回覧板のようだ。
「…ああ、来月やる、東京サミットの…」
…東京サミット…。
忘れていた嫌な予感が、ざわりと胸を覆う。
「サミット当日、そこの道、車通行止めだってよ」
「あ。梓さん、店長には言ってあるんですが、その日ポアロ休みますからお願いします」
「はい。店長から聞いてます」
この嫌な予感が、外れればいいのに。
杞憂で終わって欲しい…。
そうもいかないんだろうけど。
「安室さん」
隣で、コナンがこそっと安室さんを呼んだ。
カウンターから身を乗り出し、コナンに顔を近づける安室さん。
「…公安の仕事もちゃんとしてるんだね」
「相変わらずの詮索好きだね、君は」
そんなやり取りを聞きながら、俺はカチャリとフォークを置いた。
「…どうしたの?Aさん」
俺の様子に気づいたのか、コナンが声をかけてきた。
『…なんでもないよ。……コナンくん、…彼のこと、頼んだよ』
「え?」
何が始まるのか分からないけれど、俺が彼の隣で迫る脅威に立ち向かうことはおそらくない。
物語の主人公はあくまでこの小さな探偵。
今回彼の隣に立つのは、江戸川コナンなのだ。
ならば俺は託すしかない。
俺は影で、彼を支えることしかできないのだから。
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096 - 柳さん» いえいえ!こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2019年7月13日 14時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 096さん» なるほど、説明ありがとうございました!これからも頑張ってください (2019年7月12日 6時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 柳さん» 現生は、少し乱暴な現金の類語で、生の現金という意味です…!紛らわしい書き方をして申し訳ありません…!ご意見ありがとうございます! (2019年7月11日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 397話の「い、一回払い…しかも現生かい…」のところ、「現金」ではないでしょうか…?間違っていたら申し訳ございません (2019年7月10日 23時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 花奏さん» コメントとお祝いのお言葉ありがとうございます!内容をお褒め頂き、とても嬉しいです…!!お気遣いもありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年6月16日 21時