321話 ページ22
目暮警部と呼ばれた人が窓を開ける。
「こんにちは、目暮警部」
『あ…っ』
中を覗き込んだのは、お兄さんだった。
「事件のようですね。どうして彼がここに？」
「彼は事件の重要参考人だ。血のついたナイフを片手に座り込んでいたんだよ」
「ほぉ？彼が犯人だと？」
「状況的にそうだろう。我々も信じたくはないが…」
どうして追いかけてきたの…。
僕はまだ、お兄さんが求めている僕じゃないのに。
「事情を聞いても、様子がおかしくて…」
怖くて、顔を見ることが出来ず俯く。
「おそらく、彼は犯人ではありませんよ」
「どうしてそう言えるんだね？」
「ナイフを使った刺殺にも関わらず、彼の手や袖には血が付着していない」
「確かに、手袋も持っていなかったようですし…」
「それに、彼の右肩に薄っすら血が付着しています。おそらく、犯人がぶつかって付着したんでしょう」
驚いて顔を上げた。
すごい、当たってる…。
「でも、どうして黒瀬くんが凶器であるナイフを？彼ほどの人間なら、凶器に指紋をつけるなんてありえないだろう？」
「それは……」
お兄さんは少し間をあけた後、話した。
「彼、今記憶喪失なんです。8歳のころまで、記憶が退行しています」
「き、記憶喪失!?」
「彼の今の記憶は、ご両親が目の前で刺殺されたのが新しい。状況を見るに、混乱してしまい、ぶつかった際に犯人が落としたナイフに触れてしまったんでしょう。…そうですよね、楓くん」
お兄さんの言葉に、小さく頷いた。
「…楓くん？」
「幼少期の彼の名前です。少し複雑な家庭で育ったようなので」
「そうなんですか…」
息をするように吐いたお兄さんの嘘に警察の人は納得した。
「なら、逃げる犯人を見たんじゃないか？」
思い出そうと必死に記憶を呼ぶが、頭に浮かぶのはお父さんとお母さんを刺した、あの男だった。
『…っ、ちが』
「すみません、彼を車から出してもらえますか？」
「あ、ああ」
お兄さんの言葉で、僕はパトカーから降ろされた。
震える体を、お兄さんが抱きしめてくれる。
『怒って…ないの？』
「怒ってません。心配したんですよ、朝起きたらいないから…」
『そうじゃ、なくて…、僕、まだお兄さんが探してる僕じゃ…』
「…そんなこと気にしていたんですか？君は君、でしょう？」
その言葉に心が落ち着いた。
急がなくてもいいのか…。
僕は、お兄さんの傍にいてもいいんだ…。
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096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようで嬉しいです！頑張ります!!これからもよろしくお願いします！ (2019年6月7日 22時) (
レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます！これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…！本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします！こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：096 | 作成日時：2019年5月23日 22時
