759話 ページ10
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『こんにちは。はじめまして、飯田響輝くん』
昼休み。
保健室に行くと、端のベッドの上に彼はいた。
「響輝。この人はこの間着任した心理カウンセラーの先生なの」
「……黒瀬、A」
飯田先生の紹介を聞いた後、持っていたパソコンを閉じ、警戒心丸出しで俺を見上げる響輝。
幼さが残るが、端正な顔立ちの生徒。
飯田先生と似て、ツリ目がちでキツい印象を受ける。
『知ってくれてるんだね。本業はこっちなんだ。飯田先生に君のことを聞いて、何か力になれればと思って』
にこっと笑みを向ければ、目を逸らされた。
…完全に心を閉ざしているようだ。
「あの、黒瀬先生。ここはお願いしても…?」
『ええ。少し2人でお話ししたいので』
飯田先生は会議があるらしく、俺と響輝を残して保健室を出て行った。
ギシッと彼がいるベッドの上に腰掛けた。
『さて…学校は好き?勉強は?』
「は…?」
突然の質問に響輝は目を丸くする。
『俺は、勉強は好きだったけど、学校は嫌いだった』
「…なんなの、急に。身の上話で距離を縮める作戦?」
『ふふ、よくわかったね。観察眼、洞察力が鋭い』
人の心に本気で踏み込むためには、俺自身が偽ってはいけない。
仮面をかぶってはいけない。
スッと笑みを消した。
『学校は――…特に中学は、俺にとって地獄だった』
「…だから、なんなの。それでも頑張って通って、今こうして自分が仕事出来てるから、お前も頑張れって言いたいのかよ」
『君がここにいる時点で、俺より偉いよ。…俺は中1と中2のときはほとんど学校に行かなかったから』
「引きこもりかよ」
『それはちょっと違うかな。俺、小さいころに両親亡くして施設で育ったんだ。その施設にもいたくなくて、学校にも行きたくなくて…お金がもらえる遊びばかりしてた時期があったんだよ』
その言葉に、響輝は察したようだ。
『だから響輝くんは偉いよ。頼れる親戚のお姉さんもいるみたいだし。頼れる人がいるっていうのは、素晴らしいことなんだよ。大切にしてね』
昔の俺が零さんに会っていたら…きっと何もかもが違ったんだろう。
でも、こうして今出会えているだけで――もう十分だ。
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096 - ロマンス細胞さん» いえいえ!こちらこそこめんとありがとうございました!告白もありがとうございます(笑) (2020年2月13日 13時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ロマンス細胞(プロフ) - 096さん» 返信ありがとうございました!(´;ω;`)めっちゃ好きです←(突然) (2020年2月12日 22時) (レス) id: 3aaa867c85 (このIDを非表示/違反報告)
096 - ロマンス細胞さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!これからも頑張ります! (2020年2月12日 21時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ロマンス細胞(プロフ) - 最高です。これからも頑張ってください!!楽しみに読んでます。 (2020年2月12日 20時) (レス) id: 3aaa867c85 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 赤の他人さん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけるように頑張りますね! (2020年2月10日 20時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2020年1月20日 21時