694話 ページ45
「どうやら、上手くいったようだな」
優作さんがスマホを見て口角を上げた。
『何したんです?』
「これだよ」
向けられたスマホ画面を見ると、“自称世界一の工藤ファミリーフリーク!!”というブログサイトだった。
どうやらこのブログの主が、SNSで清水寺で事件を解決したのは工藤新一だという情報を流したらしい。
「彼女に直接会って、お願いしてきたの。私達のサイン付きでね」
「我々のファンなら、要求を飲んでくれると踏んでね。“我が愚息はまだ弱輩者。こんな事件でそれこそ天狗にさせるわけにはいかないので、清水寺の件はなかった事にして頂けませんか?”とね」
ブログの主は工藤夫妻の思惑通りその要求を飲み、“清水寺で私が見た工藤新一は幻だったかもしれない”と呟き、事態は沈静化していってるようだ。
世間的には収まるだろうけど、さっき赤井さんが言っていたように、組織は工藤新一の存在を把握しただろう。
零さんがバーボンとして、探り始める可能性が高い。
もしかしたら、俺にも探りをかけてくるかも。
旅行のときの電話で何も知らないとは言ったが、工藤新一が重要人物だと、零さんもとっくに気づいているはず。
そんな彼について、この世界ことを多少知っている俺が知らないはずない、という結論にいたったとしてもおかしくはない。
零さんは俺以上に頭が冴える。
零さんに限って、無理矢理吐かせようとしてくることはないとは思うが……――ない、よな?
この国を守るためなら、俺をも犠牲にできる人だ。
それを理解したうえで今までついてきた。
組織壊滅に必要な情報を集めるために………いや、なんで彼を疑っているんだ。
そんなことはしない人だって、俺が一番理解しているだろ…。
「…大丈夫か?」
『えっ』
「あまり顔色がよくないが…」
『…あ、ああ…、大丈夫。…そろそろ俺帰るよ』
赤井さんの視線から逃げるようにリビングの扉に手をかけた。
「黒瀬くん」
優作さんに名前を呼ばれて、ぴたりと動きを止めた。
「…私達はしばらく日本に滞在するんだ。何かあったら、いつでも尋ねておいで」
俺の様子に違和感を覚えたのか、そう優しく言ってくる優作さんに小さく頷いて、工藤邸をあとにした。
・
824人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
096 - ちぃさん» 読んでいただきありがとうございます!深く考えていただき、嬉しい限りです…!人の数だけいろんな行動の仕方があると思います。葛藤の中で得た黒瀬の決意を、これからも見守ってあげていてください! (2019年12月22日 21時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 別れたからってなにもしないのではなくて、世界を変えれないのなら影からサポートしたり守ったりするかも、、、。唯一の方法かなと思いました。 (2019年12月22日 1時) (レス) id: 13503def23 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - やっと読めました、自分ならどーするか考えました。大好きな世界の均衡を保つ為、大好きな人を守る為にも、零さんから恨まれるくらいに嫌われてから別れるかなーって。全てが終わった時にもう一度始めからやり直す選択をするかも知れないですね。 (2019年12月22日 1時) (レス) id: 13503def23 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りんねむさん» コメントとお気遣い、ありがとうございます!一気読みお疲れさまでした!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年12月17日 14時) (レス) id: e8c1cec671 (このIDを非表示/違反報告)
りんねむ(プロフ) - 初コメ失礼致します。ここ数日で最初から一気に読んじゃいました!とっても面白いです!無理なさらぬよう、更新頑張って下さい!陰ながら応援しております!(*^^*) (2019年12月16日 18時) (レス) id: 529938dd30 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:096 | 作成日時:2019年11月26日 23時