9話 ページ10
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「よければ、これどうぞ」
あれから数時間後。
少年探偵団と毛利さんは帰宅し、俺は一人喫茶ポアロに残された。
カウンターに移動して、これからどうしようと頭を悩ませていると、目の前に美味しそうなケーキが差し出された。
『いや、でも、さすがに…これ以上甘えるわけには』
さっきのサンドイッチの代金も結局、安室さんがもってくれることになったのだ。
「これ、試作品なんです。試食してみてくれませんか?」
こういう男がモテるんだろうな…、とにこやかな笑みを浮かべる彼を見つめる。
『じゃあ、頂きます…』
添えられていたフォークを手に取り、一口分に切り分けて口に運んだ。
オレンジソースの掛かったチョコレートケーキは、甘酸っぱくて、でもチョコレートのほろ苦さと甘さが口に広がってとても美味しい。
「どうですか?」
『すごく美味しいです…!』
甘いものは大好物だ。
率直に感想を述べると、安室さんは嬉しそうに笑った。
「ふふ、ありがとうございます」
あ、たぶんこれが、本当の笑顔だ。
『これ、貴方が作ったんですか?』
「はい。いろいろ作って試しているんです。お店に出せるかどうか」
「安室さんの手作りスイーツは、どれも美味しいんですよ」
安室さんの隣で、榎本梓さんが食器を磨きながらにこにこと言う。
さっきのハムサンドといい、このケーキといい、確かに絶品だ。
俺は普段料理しないから、是非教わりたいものだ。
「すごく不安そうだったので、少しでも甘いもので気を紛らわせられたらいいな、と」
料理が出来て、気も遣えて優しいなんて、女が放っておかないだろうな。
『ありがとうございます。…すみません』
「…どうして謝るんです?」
『迷惑かけてばかりで、何もお返しするものもないのに…』
「そんなこと、気にしないで下さい。困ったときはお互い様ですから」
こんな完璧な人間、いるだろうか。
少しの優しさで俺の涙腺はすぐ緩みそうになる。
ずっとテロ組織の中にいたから、人の優しさに触れるのは久しぶりだ。
じわりと目に涙が浮かび、すぐに顔を伏せた。
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096 - ゆずりはさん» 返信遅くなってしまいすみません…!2週目嬉しいです!改めて楽しんで頂けると幸いです! (12月5日 20時) (レス) @page23 id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずりは(プロフ) - 2週目読ませて頂きます!黒瀬くんめちゃくちゃ好きです!♡ (11月14日 20時) (レス) @page2 id: c114e89f61 (このIDを非表示/違反報告)
096 - はるさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません!2回目読んでいただきありがとうございます!!ハロと出会うのは444話です! (2022年9月13日 15時) (レス) id: 5783aede03 (このIDを非表示/違反報告)
はる - すごく面白いです!!!ストーリー読みやすくて、2回目を見てます((笑。 聞きたいことがあって、ハロと出会うシーンって何話でしたっけ?思い出せなくて、、、 (2022年8月11日 17時) (レス) id: 9c65c52711 (このIDを非表示/違反報告)
096 - みこさん» ありがとうございます!とても長いですが、ぜひ楽しんでください! (2019年8月21日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年1月30日 17時