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ーーー声が、止んだ。
静かな小路に、虫の声だけがこだまする中、先程以上の恐怖が身体を支配する。


私を喰らおうとしていた鬼を、まるで虫の命を奪うかのように彼は軽々と....
でも、安堵なんて出来ずにいた。
幼き日に私の命を救ってくれた、鬼殺隊とはまるで違う。
むしろーーーーー



「A」



突然名を呼ばれ体が強ばる。
ぶるぶると身体の震えが止まらない、寒さのせいだけではない、私はとても、振り返って後ろに立つ月彦さんの彼の顔を見ることなんて出来なかった。




「つ、きひこ、さん....」



平静を装うとするが、震えて上手く声が出ない。
だって、私ははっきりと確信してしまった、彼は、月彦さんは....




「怖かっただろう」



私の前に腰を落とした月彦さんが、そっと私の頬に触れる。その手のあまりの冷たさにぞわりと体の毛が粟立つのを感じた。
嗚呼、どうして手を握った時に気づかなかったんだろう。
この冷たさはどう考えたって





「ほら、いつまで腰を抜かしているんだい」




ーーーーー人間の体温じゃない。





「家に入って紅茶でも飲んで落ち着くといい」




私の手を強引に引く月彦さんの力は、その細い体つきからは想像出来ない程強い。



「月彦さん、貴方.........一体何者なの?」



「私は私だ、変な質問をするのは辞めてくれ」




ばっさりと切り捨てられ、そのまま家の方へと引きずりるかのように歩く。
「何者か」だなんて、聞かなくても私はとっくに理解していた。







月彦さんは鬼だ。それも、今まで私の命を狙っていた鬼達とは比べ物にならない程位が高く、強い。







ガチャ





鍵の閉まる音がした。




「想定外だ、もう少し人間の振りをして居ようと思っていたのに」




驚く程に冷たい月彦さんの声を聴き、一気に血の気が引いていく。



「私を.......喰らうおつもりですか?」





刹那、間合いを詰めた月彦さんは私の顔を見下ろし口を開いた。





「お前はそれを望むのか?」




まるで先刻までの態度はまやかしであったのかと疑ってしまう程の冷めた表情と、優しさの欠片も感じぬ発言。




月彦さんのルビーの様な赤い瞳が真っ直ぐに私を見据える。




ーーーー私きっと、おかしいのね。
こんな命の瀬戸際なのに、先程まであんなにも恐怖に身体を震わせていたのに。





「.......綺麗な目」





私を射抜くその瞳を、
とてもとても、美しいと感じてしまっていた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼舞辻無惨 , 上弦の鬼   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時

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