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呟く童磨の虹色の瞳は、ただ真っ直ぐ女を見つめていた。
Aの黒目がちな瞳が揺れた、抱き締められたままの彼女は小さく口を開く。
｢童磨さん｣
｢なんだい？｣
｢貴方はとても賢い方なんですね、出会った時にも思っていましたけど、そうでなかったらそんな風にスラスラと思っても無いことを言葉に出せないもの｣
笑みを浮かべたまま童磨が固まる。
｢？言っている事がよく分からないなあ｣
｢貴方の言葉には心が篭もってないと言っているんです｣
肯定も否定も出来なかった。
童磨には本来人が持ち合わせている喜怒哀楽というものが無に等しかった。
彼女の事を心配していない訳では無い、だが男の放つ言葉や行動の違和感にAは気付いてしまったのだ。
｢自分を偽って生きるのって、疲れませんか？｣
闇を孕む彼女の氷の様な冷たい瞳に射抜かれ、ぞわりと童磨は珍しく身震いした。
恐ろしい程毒されてしまっているAから手を離す。
あの日暮れのビー玉のような無垢な瞳は、もうそこにはなかった。
｢私は十分すぎるほどに貪欲な女です。己の都合しか考えていません。そうでなければ｣
一瞬。ほんの一瞬彼女の瞳が悲しげに揺れる。
｢....そうでなければ妻子のいる彼を、独り占めにしたいだなんて思う筈がないもの｣
妻子？人間に擬態している時の仮の家庭だろうか。
あの方はそうした仮の姿をいくつも持っている、その家庭に対してだって一片の情も持ち合わせては居ないだろう。
いや、それよりも。
ーーこの娘は、心からあの方の事を。
(自分を偽って生きるのは疲れませんか？)
先程のそんな言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようでもあった。
｢なんて、偉そうな事を言ってごめんなさい｣
嗚呼そうか。
この娘は、無惨様に愛されたいのか。
あの方は、この気持ちに気づいているのだろうか。
きっと気づいているのだろう、あの方の彼女への異常な執着の仕方を見ればわかる。
それが愛でないにしても、無惨様も彼女に対して何らかの感情を持っているのは定かだ。
｢そろそろおいとまします、お邪魔しました｣
｢うん、また来るといいよ｣
ニコリと笑った童磨が手を振るが、彼女は頷くこと無く襖に手をかけた…が
最後に1度くるりと振り返る。
｢お花、本当に嬉しかったです、貴方が慰めてくれたから私、耐えようと思えたんです｣
ニコリと呟き襖のから外に出た彼女を追おうとしたが、既にそこに彼女の姿はなかった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (
レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです！更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました！更新頑張ってください、楽しみにしています！ (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：旧華 | 作成日時：2019年11月2日 0時
