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「貴女のお名前は?」
穏やかな声で問いかけるが、返事は無い。
尚も睨めつけるようにAを見る堕姫を見て、童磨が口を開く。
「こらこら堕姫、そんな風に初対面の人を睨めつけるものじゃあないよ」
「堕姫さんと言うんですね、ここで鳴女さん以外の女性と会うのは初めてなので嬉しいです」
にこりと微笑み握手を求めるAを、怪訝な表情で堕姫は見つめた。
ーーーなんなのこの女は。
怒りでわなわなと震えながらも、堕姫は彼女の握手に応じ、そして
「っ!.......」
その手に深く爪を突き刺した。
指を伝いAの、血が床に滴り落ちる。
「「「「「!!!!!!!」」」」」
その瞬間、その場に居た無惨と鳴女を除く鬼は皆ピクリと反応した。
人間の嗅覚で例えるならば、完熟した果実のような、とても甘い鼻腔をくすぐるその香りに反応しないなど無理な話だ。
ーーーー稀血を持つ女だとは皆聞いていた。
だが、彼女の血の香りは、その場に居た誰もが今まで味わった事が無い程芳醇な香りだった。
「堕姫、いい加減その手を離せ」
無惨の低い声でふと我に返った堕姫は、勢い良く彼女から距離をとる。
「話は以上だ、鳴女」
「はい、無惨様」
「私とAを移動させろ」
「かしこまりました」
べん
という、琵琶の音と同時に無惨とAの姿が消えた。
「いやはや、素晴らしいお方ですな、私の壺の美しさが分かるとは、あの人間はとてもセンスがあると見た!」
「堕姫、どういう事だ先程の行動は」
怒りを孕んだ低い声でそう言ったのは猗窩座だった。
「何よ!アンタまであの女の味方をするつもりなの?!」
「無惨様の所有物に傷をつけた事についてだ、あの女を庇っている訳では無い」
言い争う二人の姿が、琵琶の音と共に消える。
「容赦ないなあ、琵琶の君は」
返答すること無く、他の鬼達の姿も琵琶の音と共に消えていく、室内に二人きりになったのを見計らった童磨は、静かに口を開いた。
「変わったね、Aちゃん」
その発言を聴いて、ピタリと鳴女の手の動きが止まる。
「ここに来た当初はあんな目をする子じゃ無かったよね、透き通ったビー玉の様な瞳をしていたのに」
「.....そうですね」
「俺は彼女が可哀想でならないよ」
珍しく本気で人を心配する素振りを見せる童磨に、鳴女は何も言えずただ黙り込んでしまった。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時