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「お嬢さん、ありがとう」
微笑む月彦さん。
まるで、他人の様に、突き放す様に。
よくよく考えると当たり前のことだった、例え鬼だとしても姿は美しい男の人だもの。所帯を持っていたって、何もおかしくない。
ーーー初めて出会った時のように、優しい態度と笑顔で、この家族と接しているんだろうか。
ーーーーあの満月の夜の様に、強くこの女性を抱き締めて居るんだろうか。
「もし、顔色が悪いですよ?何処か具合でも…」
「ッ嫌!!!!!!」
するりと私の方へ伸びた彼女の手を払い除ける。
目の前がぐらぐらする、顔を上げる事が出来ない。
今、月彦さんはどんな顔をしてるの?
分からない、何も分からない。
.........分からないことが、こんなにも辛いだなんて。
「っご、ごめんなさい.....!」
小さくそう謝罪をし、彼女はその家族に背を向け走り出した。
「大丈夫かしら、あの娘さん、とても顔色が悪かったわ」
「............」
「月彦さん?」
「ああ、すみません、行きましょう」
ーーーーーーーーーー
肺が破裂しそうなほど苦しい。
とめどなく溢れる涙のせいで視界が悪い。
ーーー外になんか出なきゃよかった、そうすれば見ずに済んだのに。
ーーーー知らずに済んだのに。
「あ」
足が縺れ、その場に倒れ込んでしまった。
人混みを外れた町外れ、私に声をかける人は居ない。
しんと静まりかえった夜道に、虫の声だけが響いた。
「う、うう、...っ、う」
虚しかった。
今頃月彦さんは、あの美しい女性と娘と食卓を囲んでいるんだろうか。
そう考えただけで、胸が張り裂けそうなほど痛んだ。
私の知らない月彦さんを知っているあの女性をとても憎く感じる、そんな自分が消えてしまいたくなるくらい惨めで、嫌だった。
「おやおや、何を一人で泣いているんだい?」
頭上から、そんな声が聞こえた。
聞き覚えのある、この声は…
「童磨さん.....」
「ん?ああ、暗くてよくわからなかったけどあの時の!わあ、まだ生きて生きたんだね」
縁起でもないことを言う彼はニッコリと口元に弧を描きそんな事を言った。
「また会えて嬉しいなあ」
そう微笑んだ彼は、笑みを浮かべたまますっと私に手を差し伸べる。
「可哀想に、こんなに目を腫らして」
よしよしとあやすように私の頭を撫でた彼は、私の手を掴みぐっと身体を起き上がらせた。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時