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結局こうしてAは傷ついてる。
梅「ありがとう」
堀江くんにもう1回ありがとうを言ってAの隣に座った。
堀江くんはありがとうをもう大丈夫と受け取ってそのまま帰っていった。
ずっと俯いたままのAの頭をそっと胸に抱き寄せて頭を撫でる。
ずっと大切そうに握りしめてるなにかに目を移すと
この間のクリスマスに俺からのプレゼントでAにあげたネックレスだった。
Aはいつもそれをつけてくれてて、大切にしてくれてた。
よく見るとありえないところで切れてしまっていた。
藤崎さんがこれをやったとしか考えられなくて、強い怒りを覚えた。
日「つ、ぎの、しごと、行かないと」
そう言いながら立ち上がったAはふらついてて、今にも倒れそうだった。
フラッと前に倒れそうになったAを咄嗟に支える。
「あっぶね、やめたら?できる?」
日「やらないと、仕事に私情は挟めない」
そういうAの顔は焦点があってなくてどうしたらいいか分からなくなった。
「A、」
日「やだ、行く」
このまま言っても絶対に聞かないだろうし、とりあえず俺も着いていくことにした。
現場のスタッフさんたちにわけを話して収録の見学の許可を貰い、Aがナレーションをする様子を外から見ていた。
無事収録を終え、皆さんに挨拶をしてAと外に出ると空はもう薄暗くなっていた。
電車は感染が怖いからタクシーに乗って家まで帰った。
Aの手にはずっとネックレスが握られてて、俺とは目を合わせず、ずっと車の外を見ていた。
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作者名:ふわり | 作成日時:2021年8月21日 7時