三個目 ページ4
「はい次行くよ！」
キュッと磨かれた床とシューズが擦れて音が鳴る。その次にセッターの手から投げられたボールがスパイカーの手によって向かいのコートに打ち落とされた。
「金田一、今のどう？」
「え、あっ、打ちやすいっス」
「……もうちょっと高くしてみるね」
「す、すみません！ありがとうございます」
次から次へ、人が変わるごとに少し会話をしては続けられていくセットアップからのスパイク。
今日はスパイク練って感じか。
にしても……。
「さむ……」
流石に夜六時過ぎとなれば寒い。日は落ちて暗いし冷たい風は辛い。女の子達がいないのは助かるけど外にいるには地獄。
早く帰りたい。が、他の部活の人達はまだ部活で学校にいる。
今帰ればお母さんに部活をしていないことがバレてしまう。
運動部かっこいい。軽率な理由でついた嘘が運動部だったのが間違いだった。
時間潰すにも教室にいれば先生に叱られる。どこかに寄るにはお金がない。
私自身の事情含め敵情視察の第四段階、というものだろうか。
だから……ここにいるんだよね。
その時、流れるようなセットアップが繰り広げられた。
それは何の前触れもなくバックトスで上げられたボール。それは瞬時にしてスパイカーの手に吸い込まれ、息を飲む間に地面に叩きつけられた。
「おいちょい低い。ネット当たる」
「あ、ごめん。ちょっとやってみたくなっちゃって。二週目だし許して？」
急に突風が吹いたような感覚。
突然のことなのにそれに対応できるのは流石幼馴染みというところなのだろうか。さもそれが普通のように、通学路を歩いて学校へ行くかのように。
……悔しくなるけど、こうやって惹き付けられてしまうのは流石だ。
私が何故か練習を覗くようになったのは中学一年頃。
同じ中学でも一年間しか同じ場所に通ってはいない、ましてや関わりは何もなく存在も間逆だった。
一人ぼっちの私は今と同じで帰宅部だったけどある日課があり毎日帰りは遅かった。
そんな時、ふと体育館を通りかかった時彼を見かけたのだ。
無我夢中で練習し、息を切らしてはどこか遠くを見据えているようにまたボールを打ち込む。
それは理想を叶えるための執着なんだと感じた。
それが初めてだったけど思ったよ。
たかが部活になんでそこまでする必要があるのか。
当時何にも情熱を見出だせなかったから、尚更。
私にないものを持ってる彼に感じた感情は様々だった。
鞄を開くとから残り少なくなった画鋲のケースが覗く。
この行為の原動力は嫉妬でしょうか？
どうなんでしょうか。
わかりません。
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水野ひのは(プロフ) - 緋鞠さん» 緋鞠様ありがとうございます。少しでも良かったと思って頂けたなら嬉しいです！きっと大変綺麗な心をお持ちなんですね。ありがとうございます！頑張らせて頂きます！ (2020年1月29日 18時) (
レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
緋鞠(プロフ) - コメント失礼します。題名で気になり読んでみたら、いつの間にか泣いていました。素敵な作品をありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2020年1月29日 17時) (レス) id: 207604f612 (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - 風華さん» ドラゴンフルーツというのもありですね！大丈夫ですドラゴンフルーツと答える方もかなりいます。正常です。私の父は迷わず赤飯と答えました。これは異常です。コメントありがとうございます。 (2020年1月2日 16時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - 初コメ失礼します！赤い果物で思いついたのがドラゴンフルーツだっんですけど…私の方がおかしいですかねw (2020年1月2日 11時) (レス) id: a3f48bb6df (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - ティラミルクさん» ティラミルク様丁寧なご指摘ありがとうございます…！わっ、目なんて根も葉もないですね…。修正させて頂きました。拙い作者ですのでまた何かあれば言ってやってください！ (2020年1月2日 0時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水野ひのは | 作成日時：2019年12月29日 11時
