十二個目 ページ13
「……なに、これ」
あの人は下駄箱を開けるなり落胆のような声を発する。
顔は見えないが一瞬固まったのがわかりやすく見えた。
「及川、今日もどうだ〜」
「まぁ画鋲お持ち帰りだろ」
「シャレになんねーんだよな」
制服に着替え、それぞれ上靴に履き替えた三年生が歩き寄る。そして何も声を出さない彼の横に行き、中を覗き込んだ。
怖い。心臓がドッドッドッと大きく脈打つ。
「あー……これは……」
死ね、消えろ、憎い。
そんな存在否定する言葉が書かれた紙。
ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
これの根元は私だ。
「これなんだけど」
「……こんなの」
「嫌な記憶思い出したらごめんね。これだと本人を物理的に傷付けることはないよ」
「でも……」
精神的に傷付けてしまう。本人に害が及んでしまう。それは痛いほど承知していた。
「俺の自筆だからAさんに危害はない。マンネリしても噂になんないしたまにはどう？」
そんなに簡単に言えることじゃないし、やっていいことじゃない。
この人は壁ではなく画鋲なのかもしれないと嫌悪を感じた。
でもそれは私の言えたことじゃない。
国見君が違うくも正しい正論を言っていたのもまた事実。
それから答えを濁して二日後に聞いた一言。
「あの人が精神的に傷付くことはもう絶対ないから」
縋らせてくれる甘い言葉に自分を委ねて、今に至った。
傷付いてしまってるじゃん。でもこれは国見君も誰も悪くない。私のせいだ。
「なるほどな……」
「結構可愛い字なんだな」
その時、花巻さんと松川さんが軽く笑った。
「とにかく早く片しとけ。他の奴らに見られたら面倒だろ」
岩泉さんが手を入れ紙を集める。
「……おい、なににやにやしてやんだキメェ」
「いや？別に。ありがとね」
あの人はにやついた声で共に紙を集め始める。
あぁ、ごめんなさい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水野ひのは(プロフ) - 緋鞠さん» 緋鞠様ありがとうございます。少しでも良かったと思って頂けたなら嬉しいです！きっと大変綺麗な心をお持ちなんですね。ありがとうございます！頑張らせて頂きます！ (2020年1月29日 18時) (
レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
緋鞠(プロフ) - コメント失礼します。題名で気になり読んでみたら、いつの間にか泣いていました。素敵な作品をありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2020年1月29日 17時) (レス) id: 207604f612 (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - 風華さん» ドラゴンフルーツというのもありですね！大丈夫ですドラゴンフルーツと答える方もかなりいます。正常です。私の父は迷わず赤飯と答えました。これは異常です。コメントありがとうございます。 (2020年1月2日 16時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
風華(プロフ) - 初コメ失礼します！赤い果物で思いついたのがドラゴンフルーツだっんですけど…私の方がおかしいですかねw (2020年1月2日 11時) (レス) id: a3f48bb6df (このIDを非表示/違反報告)
水野ひのは(プロフ) - ティラミルクさん» ティラミルク様丁寧なご指摘ありがとうございます…！わっ、目なんて根も葉もないですね…。修正させて頂きました。拙い作者ですのでまた何かあれば言ってやってください！ (2020年1月2日 0時) (レス) id: 8eec0cab53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水野ひのは | 作成日時：2019年12月29日 11時
