不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

93.繋いだ手 ページ43

しばらく車を走らせ、


　長く、暗いトンネルを抜けると


　視界に広がるは


　赤や黄色に染まる暖かな色のキャンバスの世界。




「綺麗…」




「とても美しく色づいているな。


　旅館も楽しみだ！」



　柔らかな表情の杏寿郎さんの頬も


　心なしか少し紅に染まっている気がした。



　互いの家へのお泊まりはしているけれど、

　
　ホテルや旅館への二人きりのお泊まりは初めてだ。


　そう思うとなんだか緊張してきた。



「A？どうした？」




「い、いえ！」



　杏寿郎さんはまっすぐ前を見ながら、


　顔いっぱいに微笑んだ。



「旅館のチェックインまでまだ時間がある！

　少し歩いて温泉街を散策しよう！」



「いいですね！」



　
　近くの駐車場に車を止めると、


　車のドアを開けて地に足を下ろす。
　

　私たちの住む街よりも標高が高いので、

　
　思っていたよりも肌寒く感じた。


　指先が冷たくて、私が顔の前で手を擦っていると、


　不意にその手を取られ、あたたかい飲み物が手の中に。



「ありがとう。」


「うむ！すぐそこに自販機があって良かった！

　そのくらいの大きさなら荷物にもなるまい！」


　私はいただいた温かいほうじ茶を飲むと、


　一度カバンの中にしまい、お財布を取り出す。



「あのお金…」


「それは不要だな！

　そのかわり…」



　杏寿郎さんは私の手を取り、指を絡める。



「今日はひとつ願いを叶えて欲しいんだ。」



「願いですか？」



「うむ。」



　私は何のことだか全く検討がつかず、首を傾げる。



「なんでしょうか？」




「それは…まだ秘密。」



　杏寿郎さんは目を細めてそう言うと、



　私の手を引いて歩き始めた。

　



　坂を下っていくと、観光客で賑わう温泉街へと出た。




　人の多さに圧倒され、その波に飲まれてしまいそう。



　杏寿郎さんは私がはぐれないようにと、



　ぎゅっと繋いだ手に力を込めた。

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