不滅の愛を 2【煉獄杏寿郎】

70.絵になる ページ20

「ん…」


「起きたか？」


「…杏寿郎さん？

　あれ？私…外で寝ちゃっていました！？」


　杏寿郎さんは私の隣に腕を組んで腰をかけていた。


「全く、君は油断も隙もない。」


「…え？私なんかしちゃいましたか！？」


　冷たい風が吹き、酔いが一気に覚める。


　彼は目を伏せて口を結んでいる。


「いや。

　風邪を引いてしまうぞ。

　そろそろ戻ろうか。」


　そう言うと目を開けてこちらに微笑みかけ、

　少し眠そうな目で私の頭を撫でる。


「はい。」



　店内に戻ると、先程の賑やかさとは違い、

　先生たちは静かにお酒を楽しんでいた。


「A、大丈夫かァ？

　猫じゃあるまいし、どこでも寝るんじゃねぇぞォ。」



「…すみません。」



「…もう酒はやめておけ。」


　冨岡先生はそう言うと水を渡してくれる。


「はい。ありがとうございます。」


　杏寿郎さんは隣に腰を下ろすと、

　グラスに入っていたお酒を口にした。


　私はおもむろに杏寿郎さんを盗み見た。



　お酒を飲み込むときに動く喉仏が色っぽくて


　呼吸が上がっていく。


　彼はどんな場面を切り取っても絵になってしまう。



「日本酒いただこうかな！」


「お！いいねえ。」


「ああ、明日は休みだからとあまり飲みすぎるなよ。」


「悲鳴嶼さんもまだいけるだろう？

　一緒に飲もうぜ！」



　

　みんな楽しそうだなあ。

　素敵な同僚に囲まれて、私は本当に幸せ者だ。




　その後、21時近くまで宴を楽しんだ私たちは

　今日の疲れを取るためにと、その場でお開きになった。



「杏寿郎さん？大丈夫ですか？」


　すっかり酔いが覚めた私は杏寿郎さんに声をかける。


「…ん、大丈夫だ。

　まだ電車はあるな…

　君の家の最寄駅に着いたら、タクシーを呼ぼう。」


　私たちは二人で駅の改札を抜けてホームへと足を運ぶ。


　ベンチに座って電車を待っている間、

　杏寿郎さんがあまりにも静かなので

　私は彼の顔を覗き込む。



　目をとろんとさせて、その瞳は潤んでいる。
　

　ふふっ。可愛らしい。


「杏寿郎さん、酔っていますね〜。」


「ん〜？酔ってなどいないぞ？」


「嘘はいけませんよ〜。

　その目が物語っています。」


　杏寿郎さんは柔らかく笑った。


「愛いなあ、A。」


「へ！？」




　そう言うと、杏寿郎さんは私の頬を両手で包んだ。



　ホームにはアナウンスが響く。

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