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63.欲しいのは ページ13

「A先生!」

 眩しいほどの笑顔で私に声をかけた彼は

 手招きをする。


「ごめん、少しだけ席を外すね。

 何かあったら近くの先生に声かけて呼んでね。」


「はーい!」


 私は保健係の生徒2人にそう話すと、

 杏寿郎さんの後を追う。


 彼はこちらの様子を伺いながら

 少し先を歩く。


「煉獄先生?」


 体育館の裏側に入ったので、私は不思議に思って


 声をかけると、不意に腕を掴まれて連れ込まれる。



「…っ!?」



 声を出そうにも背後から口を手で塞がれて話せない。


 杏寿郎さんは私を背後から包み込んで


 右手で私の口を、


 左手で私の手首を掴んでいる。

 



「しー、静かに。」


 彼は左耳に優しく囁く。


 私が静かに頷くと、彼はそっと私の口元から手を離した。


「どうしたのですか?」


 私は小声で彼に問う。



「すまない。

 すぐに戻らなければならないよな。

 手短に、簡潔に話すから聞いてくれるか?」


「…何でしょう?」


 杏寿郎さんの身体との隙間があまりないので

 彼の熱を奪うように、私の背中が熱を帯びていく。


「見ていてくれたか?」


「もちろん見ていましたよ。

 …かっこよかったです。」


 私は体の向きを変えて彼の正面に立つ。


「とてもかっこよかったです。」


 暗い体育館裏でも、

 杏寿郎さんの瞳はキラキラと輝いている。


 彼は嬉しそうに目を細めて、顔を綻ばせる。


「嬉しいな!

 君にそう言われることが何より嬉しい。

 A先生、実はお願いがあるんだ。」


「お願い?」



「リレー、頑張って走ったのでな!

 今晩、君の作るさつまいもの味噌汁が食べたいんだ。

 作ってくれるだろうか?」


 風で彼の羽織が踊り、


 袴の紐できゅっと絞められた腰元が見える。


「そんな改まってお願いされなくても

 いつだって作りますよ?」


 杏寿郎さんは嬉しそうに微笑むと、


 おもむろに私の右耳を手で塞いで、


 ゆっくりと左耳に唇を寄せる。





「ありがとう。



 だが、もうひとつ欲しいんだ。」






「もう…ひとつ?」











「君のその熟れた唇が欲しい。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 映画好き人間さん» 楽しんでいただけて光栄です!質問についてですが、お褒めにあずかり恐悦至極に存じますが、全くの一般人です。空想妄想で物語を作るのが好きなので、浮かんだ言葉や設定を繋ぎ合わせております。本当、勿体無いお言葉をありがとうございます。 (7月27日 10時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
映画好き人間 - 毎日楽しく読ませていただいてます。作者さんの書く煉獄さんは本物の煉獄さんで大好きです。内容も素敵ですし、胸をときめかせながら読んでます。単純な質問なのですが、もしかして小説家ですか? 小説の内容も表現も凄くて、売られてる小説ぐらい上手ですので……。 (7月26日 13時) (レス) @page48 id: f9c87e3b18 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - nkmrさん» こちらこそ、お読みいただきありがとうございます!寒い時期の温泉良いですよね( ˊᵕˋ ) 続編も引き続きお楽しみください! (2021年12月30日 10時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
nkmr(プロフ) - 年末の忙しい時期に更新ありがとうございます。続編も楽しみにしてます(・◡・)私も先週温泉に行ったので情景が浮かんでより物語に入り込んじゃいました(*´꒳`*) (2021年12月30日 2時) (レス) id: 1ab27b7589 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - みいさん» みいさん、いつもありがとうございます!デレてもらえるなんて嬉しいです。こっそりデレちゃってください( ˊᵕˋ ) (2021年12月19日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年12月1日 20時

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