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ただ、そう。無駄な心配をしてしまったと感じるだけ。自惚れというわけではないが、ただの友達にクラスが離れただけであそこまで悲しまれると多少思い上がってしまうのも無理はないと思う。本当に、今にも泣き出すのではないかとひやひやした程なのだ。まあ、あの様子を見る限り杞憂に終わったようだが。腹立たしいような、虚しいような、安心したような。色の違う様々な感情が、パレットの中でぐちゃぐちゃに混ざっていく感覚。そうして出来上がった色は、恋と呼ぶにはあまりにも濁っているような気がした。
と、不意に机に置いたスマホの明かりが点いて、画面にメッセージの受信を告げる表示が現れた。Aからだ。今の時代、文化祭やら何やらの学校行事に乗じて連絡先を交換するのはそう難しい事ではない。咄嗟に彼女の方を見ると、メロンパンを頬張りながらスマホを弄っている送り主が目に入る。
怪訝に思いながらもAとのトーク画面を開くと、一月一日に新年の挨拶をした時のやり取りの下に一枚の画像が貼られていた。ゲーム画面のスクリーンショットのようで、金髪をツインテールにしてメイド服を着た可愛らしい少女の絵が描かれている。見覚えのあるキャラクター。殆ど間を置かずに「SSRリリちゃん出た!」というメッセージが届いた。
そう言えば、と思い出す。Aと話すようになったきっかけもこのゲームだった。友達にやっている人がいないから話し相手を探していたのだと。確かに今開催されているガチャでは、彼女が一番好きだと言っていたキャラが最高レアとして登場しているが──
スマホから目を離してもう一度教室の対岸にいるAを見ると、彼女はこちらに向かって満面の笑顔を浮かべながら小さくピースサインをしていた。心臓が一拍、大きく跳ねる。
このくらい直接見せに来れば良いのに。そう思いつつも、このどこか秘密めいたやり取りに気分がふわふわと浮かぶのを抑えられない。多分恐らく、恋情に最も近いであろう気持ち。友達に呼ばれてすぐにそちらへ向き直った彼女の横顔を見つめて、目を伏せる。
ああ、くそ。これではAの事をどうこう言える立場ではない。その笑顔に、その言葉に、その存在に、執着してしまっているのは他ならぬ自分自身なのだと。認めたくない感情を黙らせるかのように、何の罪も無い唐揚げに箸を突き立てた。
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万代(プロフ) - ミイミイー☆(旧アカ3)さん» 初めまして。嬉しいお言葉、有難う御座います…!リクエストの方ですが、只今私生活が多忙でご期待に沿えるだけのものを書く余裕がないため、今回は見送らせて頂きます。大変申し訳御座いません…更新自体は時々しようと思いますので、お暇な時にでも是非お越し下さい。 (2020年5月22日 22時) (レス) id: 41e9c26b05 (このIDを非表示/違反報告)
ミイミイー☆(旧アカ3) - 応援してます!これからも更新頑張ってください!(ちなみに私は箱推しのemさんGirlです) (2020年5月22日 18時) (レス) id: 0f788aa618 (このIDを非表示/違反報告)
ミイミイー☆(旧アカ3) - はじめまして!文章の語彙力と表現力が凄い素敵でした!リクエストいいですか?もしよろしければ疲れた夢主を甘く癒やすemさんとか、ロールキャベツ系男子のemさんとかお願いします!出来なかったらすいません… (2020年5月22日 18時) (レス) id: 0f788aa618 (このIDを非表示/違反報告)
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