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エンジンを切ると、急に周りがしん、と静まった。
単身者が多いからかこのマンションのあたりはいつも静かだった。コの字型の建物に沿って十数台停められるようになっている駐車場はほぼ満車やけど、今はここに、俺とAちゃん以外ほかに誰もいない。
俺が車から出ると先に出ていたAちゃんは、紙袋とちいさなバッグを手に持ったまま空をあおいでいた。
それで思わず、
「綺麗やな。」
って。そう言った。ほとんど無意識に。
「ね。今日、いい天気だよね。星もよく見えるし。」
俺のほうを振り返ったAちゃんのドレスの裾が揺れた。水色がやわく波を打つ。
「そうやなくて、Aちゃんが。」
俺はAちゃんに近づき、その手首にそっと触れる。
「そのドレス、よう似合ってる。かわいい。」
気持ちが昂って胸のうちにあるAちゃんを褒める言葉をすべてならべてしまいたいと思った。一体何がそうさせているのかもわからないけれど。
酔っ払って上機嫌だったはずなのに、緊張と照れが合わさったような変な顔で俺を見上げる、すっかりいつも通りのAちゃんが可笑しくて、だからAちゃんがなにか反応を示す前に、首をかしいで、ちいさくキスをした。
とても一度だけでは足りそうもなかったけど、マンションのどこかからドアの開く音が聞こえたから仕方なく諦めて、Aちゃんの手を取って歩き出す。
Aちゃんの指が俺の手を握り返していることに、充足感を覚えながら。
鍋の中のハッシュドビーフとすっかり片付いた部屋、時刻通りの迎え、それから、水色のドレスと、キス。
Aちゃんが帰ってきたことで、魔法のように怠惰な昼間は完全に消えてなくなっていた。
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蒼 夢見子(プロフ) - 璃実さん» 璃実様、お返事が遅くなってしまいごめんなさい…！ただのいちファンとしての勝手な主観ですが、大倉くんの強さややさしさを描けたらなと思いながら書いていたお話なので、そう言っていただけてほんとうに嬉しいです。最後まで読んでくださりありがとうございました^^ (2023年3月4日 22時) (
レス) id: 4e57835bcc (このIDを非表示/違反報告)
璃実(プロフ) - 沢山の人から生真面と言われてきたので主人公とどこか重ねて読んでいました。私がそうであってほしいと思う大倉くんと、きっとほんの一部ではありますが私が見てきた大倉くんを形にしたのもがまさに夢見子さんの描く大倉くんでした。素敵なお話をありがとうございます。 (2023年2月19日 23時) (レス) @page23 id: 096fac2c00 (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 日玖さん» 日玖様、最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。そのようなことを言っていただけて私もしあわせです……少しでも楽しく読んでいただけていたらそれだけでもうとても嬉しいです^^ありがとうございました…！ (2022年3月13日 17時) (レス) id: caebde5a3d (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 美波さん» 美波様、あたたかいコメントいただけてとてもうれしいです…（涙）お話を書くのは自己満足のためとは言え、読んでくださる方がいてこそ最後まで書くことができたと思っています。こちらこそ心から感謝です……本当にありがとうございました！ (2022年3月13日 17時) (レス) id: caebde5a3d (このIDを非表示/違反報告)
日玖(プロフ) - 完結おめでとうございます。ほんっとうに物語に引き込まれっぱなしで、読んでいる時間いつだってとても幸せでした…！素敵な作品を、ありがとうございました。 (2022年3月9日 22時) (レス) @page23 id: bbffd7f7da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 夢見子
| 作成日時：2019年7月16日 0時
