Quoi que vuos【時透無一郎】３rd

vraiment ９７ ページ15

母「で、お話というのは……」



なんだろう、この空気めっちゃ嫌だ。
私、本当に拷問されんのかな←



「今回の演奏……とても素晴らしかったです。
あの時……１０年前のコンクールに初出場した時の演奏と同じ…」



褒められているのかと思い、軽く礼をすると審査員の方は本題に入るかのように息をついた。



「そこで…なのですが……」



「来年に行われるショパン国際ピアノコンクールに出場して頂けないかと…」



貴「はぇ？」



変な声を出してしまった。

だけどショパン国際ピアノコンクールは五年に一度、ポーランドで行われる世界的なピアノコンクールだ。

当然、レベルもかなり高い。



貴「………」



母「A、凄いじゃない！！」



わかってる、



そのコンクールに出場できるということは名誉あることなのだと








コンクールに出るのが嫌なんじゃない



目立つのが嫌なんじゃない






………………胸騒ぎがする




まるで全てを失ってしまうような、



コンクールの前に私自身が壊れてしまいそうな




だけど私は昔からのクセのせいか否か、出ると言ってしまった。




ピアノと人生を歩むためには、



期待を裏切らないためには、




これが最善だったのだ。








私は小さい頃からピアノと付き合ってきた自分の手を、穴が開くほど見つめた。

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