タイムリミット五分前

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Aは車に撥ねられたらしい。

そして犯人は轢き逃げし、今も尚、逃走中だと。


『許せない』という怒り以前に自分の無力さに打ちのめされた。

昨日、俺はAが事故に遭う前にAと会っていた。
「送ろうか」と聞いた時、Aは首を振って笑顔で「大丈夫！」と答えた。

その笑顔に確信があった。
明日も、これからもずっと、その笑顔が俺のそばにあるのだと。

でもそんなものは結局、ただの希望に過ぎないものだったんだ。
無理にでも俺が送っていたなら、きっと何かが変わっていたのに。


俺はいつの日かAに貰った、少し分厚めのメモ帳を取り出した。
この中にAとの思い出を書いていたりもした。


「……っ」


考えれば考えるほど、悲しさや怒りや悔しさという複雑な感情が込み上げてきて、Aの病室で俺は情けなく嗚咽を漏らしながら泣いてしまい、いつしか眠りに落ちていた。

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