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「他の幹部? まだ幹部がいるってことか?」
「いる。あと三人。そのうちの一人が近くの発電所で悪だくみしてるから、止めに行きたいならどうぞ。私は手助けしないけどね」
「どうして、そこまで……」
訊いてもいないのにホイホイとギンガ団の情報を口に出すウラヌス。これではウラヌスが俺にギンガ団の邪魔をさせようとしているみたいだ。
「綺麗な人は嫌いじゃない」
ウラヌスの言葉だけが世界に残ったような気がした。
でも、彼女の瞳は何かに失望しているようだった。
「それだけよ」
そう言い残すと、ウラヌスは踵を返して立ち去っていった。
追いかけようとはしなかった。だって彼女の背中が、“こっちに来るな”と叫んでいたから。
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「ねえ酷いと思わないの? マーズだって、勝負が面白かったからって理由で子供ひとり無傷で帰したのよ」
「黙れ」
幹部になると、アジトの中に個室が用意される。
ベッドもあればテレビもある。シャワーもある。
とにかく、寝泊まりできる設備が整えられた個室を与えられるのだ。
当然Aにだって個室がある。……にも関わらず、Aは今ベッドに押し倒されている。
サターンの部屋で。
「お前、発電所の近くにいたはずだろ。
なのに何故救援に行かなかった?」
「もうその頃には別の場所行ってたし」
「……お前が発電所の付近にいた時間帯、コトブキシティでギンガ団と子供が激突した。しかもその子供がギンガ団を退けた。
お前は、その子供にギンガ団の邪魔をさせようと発電所のことを教えたんじゃないのか」
なんでそんなに鋭いんだよとAは内心げんなりする。
もう嫌だ。なんなんだこいつと言ってしまいたい。
「なんでそんなに私を裏切り者扱いしたがるのよ。発電所の所長、娘がいたんでしょ? その娘が助けを求めた、それがたまたまコトブキシティでギンガ団を退けたトレーナーだった……そう考えるのが、妥当なんじゃないの」
「それは私にとって妥当じゃない」
「なにそれ。どれだけ私のこと嫌いなの。それとも私を襲いたいだけ?」
「自惚れるな。お前みたいなガキに興味はない」
「は?」
二十二歳のサターンには、十六歳のAはまだまだ大人には見えないし思えない。
実際問題、サターンの視点から見てみれば、Aは同じ年頃の女子よりかは落ち着いているが、それでも言動の節々に、取り繕うことのできない幼さを感じてしまう。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年1月26日 20時