氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ47)

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トバリシティに着いたとき、どこからか、聞き覚えのあるポケモンの鳴き声が聞こえた気がした。

トバリシティに夜の十二時を知らせる鐘が鳴る。ほとんどの家庭は既に寝静まった後だ。

サターンが顔を上げると、その鳴き声が再び、より鮮明に脳の中に響き渡る。

「きゅううん！」

それを聞き、ハッと確信した。
この鳴き声を、確かに知っている。
忘れるはずがない。忘れていいはずがない。

「……アグノム……？」

四年前に犯した最大の罪。それを象徴するポケモン。

リッシ湖を棲処(すみか)とし、大昔、人々に物事を成し遂げるにあたって必要な決意、困難に立ち向かう強さ……いわゆる“意志”を与えたとされる伝説のポケモン。

しばらくトバリシティの夜空を見上げていると、一瞬視界がぐにゃりと揺らいだ。

「きゅうううん！」

「っ……！」

サターンの目の前に突然パッと姿を表したのは、湖の如く清廉な美しい毛並みを持った＿＿＿アグノムだった。

さすがは意志を司るポケモンというべきか、その瞳は揺れ動くことなく真っ直ぐサターンを見つめている。

四年前＿＿＿＿リッシ湖に落とした爆弾によって湖の水は干上がり、結果として、コイキングを始めとした多くの魚ポケモンの命を奪うことになった。

当然それにアグノムは怒りを覚えるわけで、しかし当時のギンガ団にとってポケモンの感情など蚊帳の外。実力行使で痛めつけ、三湖のユクシー、アグノム、エムリットはそれぞれ捕獲された。

生体実験に深く関わっていたサターンとして、アジトの実験室で見た三体の中で特に印象に残っているのはアグノムとエムリットだ。

エムリットは人々に喜怒哀楽をもたらした感情ポケモン。豊かな感受性を持っているからか、非常に怯え、苦しんでいるようなあの目と姿をよく覚えている。

対するアグノムは、湖での捕獲任務の際は爆破の件で怒り狂っていたが、実験室ではエムリットのように特別感情を露わにすることはなかった。

ただ、静かにサターンをじっと見つめていた。

あの頃、ギンガ団のやり方に疑問を覚えつつもそれを呈するに至らなかった自分。アカギに従うしかなかった自分。

しようと思えば組織を抜けることもできた。Aを無理やり組織から抜けさせることだって。

にも関わらず行動しなかったのは、抜けたところで、この先を生きていく術(すべ)がなかったからだ。自分も、Aも。