氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ35)

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「コウキくんにも頼んでいるが……アカギを止めてほしい。アカギに声をかけられるのは、幹部の立場にある君、そして君と対等な立場にあったもう一人の幹部だけだ。あの幹部はアジトに残ってテンガン山の様子を見ている」

ハンサムが言っているもう一人の幹部とは、おそらくサターンのことだ。

裏切り者のAの声かけは通じなくとも、サターンからの声かけならばアカギも応じるかもしれない。

「私はギンガ団の悪事を止めるため、この地方に来た。アカギはディアルガとパルキアを呼び出して世界を壊そうとしている」

そのことは、Aも知っていた。知っていて、国際警察には教えなかったことだ。

「ディアルガとパルキアを呼び出したとき、世界の裏側にある“破れた世界”からギラティナというポケモンが出てくる可能性がある」

「…………ギラティナ？」

ギラティナというポケモンは、Aも初耳だった。
シンオウ地方の伝説ポケモンはディアルガとパルキア、そしてユクシー、アグノム、エムリットしか知らなかったのだ。

「急ぎだったので詳しいことまでは知らないが、そのポケモンはかなり凶暴で、ともすると命も危ぶまれるかもしれない。……若い君にこんなことを頼むのは気が引けるが……頼れるのは君しかいない。頼む。世界を守る手伝いをしてくれ」

ハンサムは頭を下げた。

その“大人”の姿を見て、Aは呆然とした。

国際警察なんて大嫌いだった。
国際警察なんかに協力してやるかと、ずっと密かに反抗してきた。世界なんてぶっ壊れてしまえと思った時もあった。

＿＿＿＿『でも今は、ポケモン達と一緒に強くなれるのが嬉しい』

コウキの声がまた、蘇ってくる。

＿＿＿＿『本当は見ることもなかったような景色が見えて、楽しいんだ』

極論、壊れた世界だって新しい景色だ。
けれど自分は。

＿＿＿＿『お前が求めているのは、“自由”だろう』

Aが見たい景色は、アカギの求める世界なのだろうか。

感情なき世界。

悲しい思い、つらい思い、苦しい思いはしなくていい。
けれど、楽しい思いや嬉しい思いを感じることもない。

……Aの求める自由は、そんなものじゃないはずだ。