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「待て」



サターンの横を通って部屋を出ようとすると、サターンから制止の声がかかる。
それを聞き、Aは小さくため息をこぼしてわざとらしく腰に手を当てる。



「お前……今日、どこで何をしていた?」

「218番道路の周辺でポケモン奪ってただけよ」

「なぜ下っ端を連れていかなかった」

「私が集団行動嫌いなの知ってるでしょ」

「私はそれを咎めているのだとわかっているだろう」



Aは不機嫌そうに眉根を寄せた。
親からの説教を疎ましく感じているかのように、サターンの方は見ずにあさっての方向を見ている。



「……アンタくらいですよ。幹部になってから四年も経つのに未だ私のこと信じてくれてないの」



わざとらしい敬語を使って、Aは肩を竦めた。


Aが下っ端だった頃は、当然 幹部に対して敬称していたし、敬語を使っていた。

下っ端の頃から何かとサターンと組まされることが多かったAは、昔は『サターン様』とついて回っていたものだ。
しかしそれは、彼女曰く不本意ながら……らしい。




「私はそもそもお前が幹部になった事実を認めていない。入団してからたった一年(・・・・・)たった十二歳(・・・・・・)だったお前が幹部になんて」



それは、Aが幹部になったとき、誰もが思ったことだ。
しかし、それからの彼女のギンガ団の中での活躍ぶりと従順ぶりが団員達に幹部の一角として示すことになった。

それを唯一示されたところで承認しないのが、サターンである。



「私が望んで幹部になったわけじゃない。アカギ様が私を幹部にと言ったから、今の立場にいる。____そもそも」



Aが体の向きを変えてようやくサターンを見上げる。
そのとき足を動かしたので、ブーツのヒールが床と擦れてコツンと音が鳴った。



「私をギンガ団に入団させたのは、あなたでしょ」



それはもう五年も前のことだ。
Aは覚えている。

初めてサターンと目を合わせた日のことを。
あまりに冷たい目だったので、死を覚悟したほどだ。

にも関わらず、サターンはAをギンガ団に入れた。



「そりゃ、お前がここまで怪しいヤツだなんて思わなかったからな」

「ひど」

「当たり前だろ。___団員に本名を言わない、集団行動を嫌う、一人を好む……怪しいどころ満載だ」



Aはつい一年前まで、常にサターンの監視下に置かれていた。サターンと行動することが多かったのも、それが理由だった。

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年1月26日 20時

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