【第4章】理解できない男 ページ27
*
「……やっっっと、着いた……」
アジトに侵入し、ギンガ団のボス、“アカギ”の部屋の前に辿り着く頃には、俺はもう目が回りきっていた。
何なんだよ、あの黄色いワープ。なんであんなにくるくるするんだよ。せめて、テレパシーみたいに一瞬でとばしてくれよ。
アジトへの文句もそこそこに、視界が落ち着いてきた俺は、覚悟を決めてアカギの部屋に入る。
足を踏み入れると、アカギが振り返った。
アカギは頬が
「キミが報告にあった、ギンガ団に逆らっているポケモントレーナーか。……こんな子供とは思わなかった。ギンガ団の幹部達が手こずらされたと聞いていたのでね」
「ウラヌスとは一対一のバトルしかやってないけどな」
「……ウラヌス……」
アカギが呟く。
｢あの子はそもそもギンガ団ではない」
「は？ いや、幹部だろ？」
「あいつは国際警察から紛れ込んだスパイだ。伝説ポケモンを呼び出す算段も整った今、ウラヌスは既に用済み……」
あまりに非情な言い方に、腹の底からふつふつと何かが沸き上がる感覚がした。
彼女が時折纏わせていた、あの淋しさの正体が何となくわかった気がする。
ウラヌスは、世界のどこにも居場所がなかったんだ。
どこにも、誰も頼れる人がいなかった。
同時に、自分に対する不甲斐なさも湧き上がる。
彼女は助けを求めていたのだろうか。ギンガ団からの解放を求めていたのだろうか。
だから、湖のこともミオ図書館のことも教えてくれたのか？
スパイである以上、ウラヌスからはギンガ団に対して表立って手を出すことはできないから＿＿＿。
「さて……ここに来た理由はわかる。ユクシー、アグノム、エムリットの三匹のポケモンのことだろう。＿＿＿あのポケモン達はもう必要ない。キミが引き取ってくれるなら処分する手間が省ける。自由にしたまえ」
「っ、てめぇ……！！」
ポケモンは生き物だ。処分？
利用するだけ利用しておいて道具扱いか。
更に、この組織はリッシ湖を爆破して、リッシ湖に棲む大量のポケモン達を死に晒した。
「だが、その前に……ギンガ団に盾突くキミの力、見せてもらいたい」
「言われなくても……！」
レントラーのモンスターボールを構える。
自分が抱える怒りの感情とは裏腹に、こめかみからは冷や汗が流れた。
アカギという男。虚無と冷徹。その中にある孤独な雰囲気が、俺には理解できないものだった。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年1月26日 20時
