氷の火山【サターン】【プラチナ】 (ページ1)

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【序章】テンガン山ページ1

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＿＿＿何年前のことだったかなど、そんなもの、最初から覚える気なんてなかったのだから忘れてしまった。

ただ、鮮明に覚えているのは、

寒さに何も感じていないようなすまし顔だったこと。

そのくせに、鼻を赤くして、白い息を吐いて、分厚いコートにマフラー、手ぶくろと防寒具をしっかりと身につけていたこと。

表情だけが強い意志を持ち合わせ、自分に生きる道はひとつしかないのだと言い切るような瞳で私を見ていたこと。

そのアンバランスさに、思わず笑ってしまったこと＿＿＿＿。

＊

生きる道がひとつしかなかった。
だから、死ぬ気でそこに向かった。

何も言わなかった。
せめてもの世界に対する抵抗だった。
それさえできなければ、自分には何も残らない。
何者にもなれず、みっともなく死んでいくことになるのだけは嫌だった。

誰かがそれを覚えていなくても、

私がこの世界にちゃんと存在していて、人並みの幸せを追い求め、生きようともがいたことを自分に証明したかった。

結局、死に損ねた。

いっそあの時死んでしまえばよかった。

そう思ってしまう自分がいる。

今、この世界のどこにも居場所はない。

だったら最後の最後まで、私は誰にも従わず、世界に抗って生きてやろうと思った。

*