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「どこだと思う？」
「……はあ？」
訊きたいのはこっちだというのに、このAという女は。人の心配など、完全にそっちのけである。
「いや、ごめんごめん」
Aは謝ったが、その棒読み感は拭えない。
やはり人の心配など、心底どうでもいいようだ。
「憧れだった人がいてね」
Aが口を開くと、ウルガモスは小さな黒い手をAの膝に置いて彼女を見上げた。
ウルガモスは、Aがいちばん最初から連れていたポケモンだ。彼女はポケモンバトルよりもポケモンを観察している方が好きだったため、メラルバから進化するまでにはかなり長い時間を擁していた。
……あと二体、進化条件が特殊なポケモンもいたが、それらのポケモン達も進化させたというのなら、Aの根本的な部分は、やはり、変わっているわけではない……のだろうか。
「その憧れの人に会いに行ったんだけど……なんかちょっと、私が想像してたのと違ったみたい」
「誰に」
「だからさあ」
またもやぼくの言葉を遮る。
拒絶か、それとも＿＿＿＿。
「なんかそういうのってダサいから、記憶喪失ってことにしておいてくれないかなぁ」
「は？」
理由が『ダサいから』で、この六年間の失踪を記憶喪失で片付けようとしているのか？
本当に他人の心配なんてどうでもいいのか。
「いつか、話すときになったら話すから。……だからそれまで、もうこれ以上詮索してこないで」
お願い＿＿＿＿＿。
窮屈そうな声だった。泣き出しそうな震えを我慢しているような、そういう声。
前言撤回だ。やはり、Aは変わった。六年前のAとは違う。
人間なんていつかは変わるもの。それは当たり前だ。誰もが通る道。しかし、だとしてもここまで人格が変貌してしまうものだろうか。
ふとウルガモスを見ると、ウルガモスもこっちを見ていた。虫ポケモンだから、その目から何かを読み取ることはとても難しいが、この世界に
「わかった」
そう言ってAの隣にすわる。
近くで見ると、より一層、体が小さく見える。
「その代わり、もう勝手にどこかにいなくなったらダメ。……寿命縮む」
そう言うと、Aはまたウルガモスの顔を撫でて、小さく「うん」と頷いた。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年2月25日 23時
