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「あー……」



いつ買ったかもわからないものだし、特に心の痛みは感じないが、ああも呆気なく飛ばされていったのを見ると、謎の虚無感が自分を襲う。

ポケモンを再び見ると、そこには先程までのポケモンはおらず、目を開いた。


代わりにいたのは、パワーアップしたかのように姿を変えたポケモンの姿。



「フォルムチェンジ……?」



そのポケモンは、ぼくを後ろ目に見て、そして再び洞窟の方へ進んでいった。



「……ついてこいと?」








「今、何か光った?」



先程、外で何かが光った気がした。光は小さく、そして遠いが、それでも視界の隅に入り込むような強い光。

Aを見ると、Aは流し目で窓の外を見て、そしてすっと視線を戻すと口を開いた。



「さあ。世界終焉(しゅうえん)の予兆じゃない?」

「こっわ」

「でも、いつか世界なんて終わるよ……」



それは何の変哲もない声色であった。何か特別なことを考えているわけではなく、自然に口から溢れ出たような、日常的に考えていることが転がり出たような。



「特にパルデアは、今まで二回崩壊したっていうし」

「ああ……そんな話あったね」



アカデミーの授業で習った話だ。厄災の話とか、パルデアの大穴の探検記の話。パルデアの大穴にあるという財宝について、今となっては信じていないが、昔の大人達は探し出すのに躍起になっていたというのだから、時代の流れというのは不思議なものだ。

すると、Aがよっこらせと言いながら立ち上がった。



「ちょっと、行ってくる。また来るね」

「べつにいいけど……ここ来て何か意味ある?」

「あるよ」



Aは妙にはっきりと言い張る。

昔からそうだ。誰にもわからないことを、Aだけはわかっているような顔をする。Aだけが他の人より一歩も二歩も先に進んで、だから、六年前も追いつけなくなってしまったのだ。



「私のなが〜い話、ちゃんと聞いてくれるのグルーシャだけだから」



それは、初めて見る表情(かお)だった。
好奇心に唆られる表情でも、考察して悩んでいる表情でもなく。
何かを諦めたような表情(かお)。切なさや虚無感を消し飛ばすように、無理にでも笑っていたいような表情(かお)だった。

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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年2月25日 23時

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