夫婦茶碗 ページ32
彼が食器を洗ってくれてる間に寝室に向かいベッド下の引き出しから夫婦茶碗を隠したクッションを出して、中の箱を取り出す
作ったあと焼いてもらったのを送って貰ったけど、届いた時点で作った事が恥ずかしくなり中も確認せずにそのままここにしまい込んでしまったから、完成した姿をあたしもまだ見てない
リビングに戻るとパッと電気が着いた
「うぉ、いきなり復旧したww」
『まぶし…』
「暗さに目が慣れてたからね」
『でも、これならあふれこ、えいきょうないかな』
「そうだといいけど」
『はやく、おしばいしたい。うたいたい。まいくまえに、たちたい』
「無理厳禁」
『はい』
「だいぶ戻ってるし、焦っちゃダメだよ」
『…うん』
あの場所に戻る為に頑張ってるんだから、焦って無理しちゃダメ。急がば回れだ
「その箱？」
『うん』
テーブル箱を置いて彼を見ると少しワクワクしてるみたいで、可愛いなぁ…
そっと箱を開けると側面に乙女座を描いた水色と蟹座描いたピンクのお茶碗
「おー!!素敵！」
『よかった…かたちになってる』
「星座が入ってるの、Aちゃんらしい。青い方俺だよね？」
『うん』
「あれ、裏底に別な星座描かれてる」
『うしかいざと、わしざをかさねた。ふたつかたち、ちがうのは、あるくとぅーるすと、あるたいる。あたしの、うらぞこは、おとめざと、ことざ。すぴかとべが』
「あ、夫婦星だっけ」
『あたり』
朝食用のお米を研いだ研ぎ汁と一緒に少し大きめの鍋に茶碗を入れて弱火にかける
「煮るの？」
『「めどめ」っていって、こめのでんぷんで、こーてぃんぐして、へんしょくとか、においうつりとかふせいで、ひびわれぼうしにもなる』
「デンプンってすげぇー」
『…にんげんも、めどめできれば、よかったのに』
そしたら翔も…って思わないわけじゃない。自分で勝手に翔から離れた癖に、今でも時々隣に居ないことが不思議に思う
フワフワと頭を撫でられ、その温もりにスリスリとくっつく。あー…落ち着く
「でも、だからこそ、人間は誰かを愛おしく思ったりずっと居たいって思うんじゃないかな…短い人生だから」
翔君と出逢って初めて人を好きになって、恋をした。付き合って更に愛しいと思うようになった
他の長寿生物から比べれば人間の一生なんて短いのかもしれないし、他の動物が人間みたいに恋愛するのか分からないけど…泣きそうなくらい誰かを愛おしいと思える人生でよかった。残り60年あるかないか…彼とずっと一緒に居られたらいい
『そう、かもね』
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作者名：福招猫 | 作成日時：2021年9月20日 23時
