罪みそじ あまり いつつ ページ37
·
はぁ、とため息をついて自室を出る。
冥さんに「昇格した」という知らせを受けたのはつい昨日のこと。そして、私が一級になったという話を硝子が五条に振って、彼が興味も無さそうに返事をしたのも同日。
一連の流れを思い出してはまた、ため息が出た。
(なんでかなぁ)
前はもうちょっと、まともな会話が出来てた気がするんだけど…。
いや、確かに出来ていた。ただ少し言い合いのようなものをしてしまって、それから気まずいのだ。
(確実に私が泣いたせいでもあるよね)
でも…これで良かったかもしれない。
元々お互いに嫌っていたのだから、出会った頃に戻っただけで、こんなふうに考える必要も憂う必要もない。
じゃあどうして気になるのか。
(分かんないな…)
ずっと分からないまま。
『あ…五条…』
自販機に行こうと、部屋を出てから廊下を歩いていたのだが…なんで五条が居る?
思わず名前を呼んでしまって、手で口を塞いだ。
えっ、待って?進行方向塞いでるよね?気まずくなってから話しかけられることも無かったのに。私に用?どうしたらいいのこの状況。
混乱した内心は喉の奥に飲み干して、とりあえずと声を絞り出す。
『あの、通らせてもらっても?』
五条は私の問いに答えないまま、顔を伏せて私に近づいた。ゆっくりとした足取りだが、(腹立つことに)足がたいへん長いので直ぐに距離を詰められる。
そのまま彼は右手を上げ__
『っ、!』
コツン、と軽い音がしたと同時に額に少しの水滴がついた。
五条の右手にあったのは缶ジュース。どうやらそれを私の頭に当てたようで。
痛いかと思って、当てられる寸前で反射的に目を瞑ったのに、存外優しい力加減だったと瞬きを繰り返した。
彼はそんな私を横目で見てから、少々強引にそのジュースを私の手に握らせる。
『え?ちょっと…、』
何これ、と困惑するのにもお構い無しで横を通り過ぎて行った五条。
通り過ぎる瞬間、彼の言った言葉がじんわりと耳に残る。
_「…おめでと」_
静かな声色で小さく呟かれたソレに、ほんのりと頬が熱くなるのを感じた。
一級になれておめでとうって?もう昨日のことだし。缶ジュース、なんて。
(…ヘンな優しさだなぁ)
上がった口角には気づかぬフリをした。
2235人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時