12話目 ページ12
「A、ありがとう〜。怖い思いさせてごめん。」
「悪かったな、でも本当に助かった。ありがとう。」
「ん、んん…怖かったけど、役に立てて嬉し…ちょっと苦しいよ。」
家に入った途端にハグの嵐で間に挟まれる私。
見上げると剛も源も満面の笑みで引き受けて良かったと思った。
「…と、そろそろ行く…か。」
「行きたくないなぁ。源ちゃんだけ行ってきなよ。」
剛は私に抱きついたままでバイバイと手を振る。
「ふざけんな…俺も行きたくねぇけど仕方ねぇだろ!」
「あ、首引っ張ったら…苦し…源!離せって!」
ドタバタと二人は出掛けて行き、ふうと安堵のため息。
…お化粧…落とさないと。
お風呂にお湯を溜め、大好きな香りの入浴剤をin。
「まさかあんな店だったなんて…怖かったな。」
湯船に浸かり、さっきあった事を振り返る。
…二人に感謝しないとね。
ザバッと立ち上がった瞬間に目の前が暗くなり…目が覚めると心配そうな二人の顔が見えた。
「あれ…おかえりなさ…い?」
私…お風呂に入ってなかったっけ?思い出せない…?
「A、大丈夫!?」
「どこか痛い所は無いか?」
「肩が…痛い…え、何これ?」
何故か痛む肩を擦るとタオルの感触。
不思議に思って体を見ると源のバスローブに包まれている事に気付く。
「俺らが帰ってきたらAの姿が見えなくて、源が風呂に入ろうとした時に倒れてるのを見つけたんだよ。」
「俺は慌てて剛を呼んで、その、格好がまずかったからバスローブに包んでからここに運んだ。」
「倒れてたって、私…裸。」
待って、待って。って事は二人に全部見られたって事…だよね。うわぁ、穴があったら入りたい、恥ずかしい〜。
「あの、お見苦しいものをお見せして「全っ然そんな事無かった!」」
「剛の言う通り、全く無かっ…た…。」
源は急にばつの悪そうな表情になり、剛の肩をぐいっと突き飛ばす。
「み、見るつもりは爪の先程も無かったんだ、信じてくれ。」
「そ、そ!不可抗力というか、何というか…。」
二人は暫しの沈黙の後、「「ごめん!」」と両手を合わせて謝ってきた。
「わかってる…よ。そんなに謝らないで。逆に恥ずかしい…から。着替えてくるね。」
立ち上がろうとすると足に力が入らない事に気付く。
「立て…ない?」
膝から下がうまく動かせない。
「もしかしてアクトレスで何かされた?」
「出されたお茶…飲む真似をしただけ。」
やたらと勧められて困った事を二人に話した。
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作者名:fugurifurifuri0 | 作成日時:2020年9月9日 15時