22.ハイアラーキー(飴村乱数) ページ22
ハイアラーキー
「乱数くんはきれいだね。」
ビル群の影はボクの背を包むように、暗く落ちた。
どうしたい?ボクはどちらを選ぶんだろう。また更ける夜。信号の瞬きは星々を殺しては煌々とコンクリートを照らす。ボクたちは東京の混沌のなかじゃひとりきりになんてなれない。掠め取られた声のつづきは、どうあがいてもクラクションに掻き消される。きっと病原菌みたいに蔓延るその物質たちは死にながら生きて、忘れながら覚えてそうしてまた眠るんだ。
Aには中身なんてない。からっぽのその心のなかをボクでいっぱいにして、洗脳するようにきみを嘲笑っていたいよ。人工の光は空に溶けないでやがて分離する。それはボクたちみたいにはなれない。なれない。十把一絡げの脳内が、この街の空気に似た邪悪にほだされる。病的なまでの輝き。最低のボクらにお似合いだね。
ボクたちの愛は疑獄だらけ。シュプレヒコールの真似事だけ。往く人々は俗悪だと顔を顰めるだろうね。ボクは死にながら生きてるフリをしてる。雲の上から繋がれた糸で今日も踊らされる。最底辺で這い回る。きみも同じなんだろ?それはきっと残酷ですごく簡単なことだ。子どもが虫を甚振るのと同じ。手脚をもいで翅を千切って、餌を与えてずうっと死なせない、それと同じ。
(A、ボクにはやくおちて。)
きみに酷いことがしたい。
認識上の真と、倫理上の善と、審美上の美。俺はそのすべてに背いてお前を手に入れる。
だからきれいなんかじゃない。
喉の奥に詰まった蟠りが、どうしようもなく乱反射する。
「ボクはきれいじゃないよ。きみが思ってるよりずっとね」
Aは驚いた様なそぶりをする。いやだな。ボクにその眼を向けるなよ。
A、きみはダメな子なんだ。だめ、だめ、だめ。だめなきみがとってもだいすき。手脚をもがれたきみが、ほんとうに、だいすきなんだ。死んじまえ。ボクはにっこり微笑んだ。「きみがとってもだいっきらい。」
その笑顔、その視線、その指先、そのかがやき、ぜんぶぜんぶ全部だめ。Aは呆然とした表情のまま泣き出した。ばかだね。ボクに愛されてかわいそう。ああ、かわいい子。
そう言うと絶望するきみのその顔。愛してるよ。
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タメィゴゥ - めちゃ面白かったです!ド好みです!ありがとうございました! (2019年12月23日 18時) (レス) id: 98d1675711 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - タメィゴゥさん» リクエストありがとうございます!そういうのめちゃ好きです!遅くなるかもしれませんがサマトキ了解しました! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
タメィゴゥ - すみませんリクエスト良いでしょうか? もしよろしければ左馬刻様が夢主にでろでろに依存してしまい離れられないお話を書いていただけませんでしょうか? リクエストがもはやキャラ崩壊ですがよろしければお願いします。<(_ _)> (2019年12月2日 19時) (レス) id: 78b2b55a96 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - 林檎麻さん» こちらこそありがとうございます!!!はらいくうこうくん、了解しました!ちょいムズですね…がんばります (2019年11月6日 21時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - いつも素晴らしいお話をありがとうございます…とっても好きです…愛してます…。リクエストでよかったら波羅夷空却くんをお願いしてもいいですかね…??応援してます…!! (2019年11月3日 2時) (レス) id: 5fe5e3438d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:43沿い | 作成日時:2018年8月31日 0時